ADのつまみ食い日記

第8回 ADのつまみ食い日記

第8回

「前略 おふくろ様。お元気ですか。今度くいしん坊!で長野に行くことになりました。」
最近、倉本聰さんの『前略 おふくろ様』を観まして、すっかりショーケン演じる「サブちゃん」に染まっている僕ですが、坂口良子さんはほんと綺麗だなと思う次第です。いきなり何のことだという感じですが、つまるところ今回のくいしん坊!は長野編です、ということです。
長野県は僕の出身地であり、次のロケは長野に行くと決まったときから、「何かない?」とEプロデューサーに煽られまして、この「何かない?」は、うまいものや珍しいもの、変わった食べ方がないかということで、その上、昔からこの地方で食べられてきた歴史があるとか、話があるものということで、「ただ"うまい"じゃダメなんだよ!くいしん坊!はそこらのグルメ番組とは違うんだ!」という趣旨の言葉が毎度繰り返し僕の耳を叩くわけで、そうはいってもほんとに僕は大学を出るまで食に興味がなく、ことに長野で育った高校時代までというのはその絶頂のようなもので、食卓にいつも野菜が並ぶのを苦々しく感じながら「肉が食いてぇ...」と心の9割で思っていたわけで、長野出身でも長野の食べ物を知らず、尋ねられても「おやき」とか「そば」とか、いまや誰もが知るような答えしかできなかったのです。

さるなしジャムのマフィンそんな中、Oディレクターが探してきた食材の数々は、この時期の長野のベストメンバーと呼べるものではないでしょうか。僕が知らないもの、食べたことないものがほとんどでした。
東京からロケバスに乗り込んで約2時間半、まずは塩尻の贄川というところで「さるなしのまんじゅう」と「さるなしジャムのマフィン」を食べました。

さるなしこのさるなし、キウイのミニチュア版のようなもので、それもそのはず、キウイの原種とも言われる植物なんだとか。実を割ると、中身はほんとキウイそっくり。切り口は直径1センチほどで、鮮やかなグリーンにあの黒い小さな点々(種)までがあるじゃないですか!アイスクリームに添えて出したら、カワイィ~とかいって若い女の子にバカウケすること必至。

さるなしのまんじゅうさるなしはキウイより酸味がありますが、ツンとくるような嫌みはなく、ほのかな甘さが絶妙にマッチした、正に山の果実といった感じです。甘いものが苦手な僕でも、まんじゅうの5~6個はペロリといけちゃいました。また、まんじゅうの皮がいいんですよこれ。米粉なんだそうで、もっちりとしてうまいんです。


五平餅 お次は奈良井宿というところで五平餅を食べました。五平餅はいくら僕でも食べたことのある、長野のマストフードですが、実はあまり好きではないんです。まず、甘い、1アウト。そして、もち、で2アウト。もちは別に食べられないことないのですが、何せ重いじゃないですか。食べるのに気力がいるんです。さぁもち食うぞ、とね。社会派とか戦争ものの映画を観るときって、観る前に気力がいるじゃないですか。あんな感じで構えちゃうんですね。だから1月、2月とかに部活から帰ってきて夕飯にもちが出てきたときはヘコみました。何でもちなんだよー!クソ寒い中サッカーやって、5キロも雪道を自転車こいで、やっとありついた夕飯がもちかよ!カレーかラーメンだろ!って気になってしまうのです。親思いの僕は言葉には出しませんでしたけど。
そんな、プレイボールと同時に3アウツっ!チェンジ!なもちの類であるところの五平餅ですが、今回おじゃました徳利屋さんの五平餅はうまい。まず、タレが甘すぎず、3種類もあって飽きがこない。そして決め手は、パリパリとしていること。もち感もあるのですが、囲炉裏で焼いたパリパリとした食感と香ばしさが、僕に食べ続ける勇気をくれるのです。このパリパリには驚きまして、ほんと目からウロコ、口から五平餅です。

とうじそばさて、2日目にはうちの両親が来まして、3日目には呼ぶんじゃなかったと半分後悔しました。
というのも、親にとって子はいつまでも子供であり、現場で「ゆうちゃん」と呼ぶのです。そりゃ多少良識のある親であることは間違いなく、僕をまさか「松澤」と呼ぶわけにはいかないので「ゆうすけ」と言い、「しっかりした親」を演じていたのですが、ちょっと気がゆるむともうダメ。何かのはずみで「ゆうちゃん」。特に母親がダメなんです・・・。本人はまったくそのことに気づいていないのですが、クルーのみんなは聞き慣れない言葉にすぐ引っかかる。僕もヤバイと思いながら、その場は何とかやり過ごしていたのですが、親が帰った後のロケバスではみんなから「ゆうちゃん、ゆうちゃん」。顔から火が出るかと思いました。まったく、親の顔が見てみたい。

とうじそばそういう事情で恥ずかしさのあまりに物の味も分からなくなるかと思いきや、うまいものはうまいのでありまして、東京に出て8年目、いつの間にか太くなった自分の神経に感激しました。
2日目には「とうじそば」を食べまして、写真は例の箸入れの模様です。少しずつマシにはなってきましたが、やっぱりEプロデューサーのを見ると、その段違いな巧さに圧倒されます。伊那で馬肉を食べた際には、傍らで見て勉強しました。「箸入れの極意」なんかいってDVDを作って売った方がいいと思います。ほんと共同テレビの宝です!


とうじそばさて話を料理に戻しますが、木曽の野口さん宅で「すんき」を頂きました。この「すんき」、木曽にしかない漬物で、塩を一切使わずに乳酸発酵させて作る変わったものなんですが、一口食べたときはハッキリ言ってまずかったです。酸っぱいような苦いような、独特の味がするんですが、カツオ節を乗せてしょうゆで食べたりすると、とたんにうまく感じて病みつきになります。うまく漬けるのには発酵を促す微妙な温度管理が必要らしく、気候的に木曽以外の土地ではちゃんと漬からないのが、このご時世にあって「すんき」が外に出ていかない理由なんだとか。

とうじそば そして今でも鮮烈に覚えているのが「木曽の祝い膳」と題して撮ったじじばばで、これが何とも傑作。あ、長野ではじいちゃんを「じじ」、ばあちゃんを「ばば」と親しみを込めて呼びます。蔑称ではないですよ。念のため。
料理としては「ちらしずし」と「大平(おおびら)」という煮物的な、なんともシンプルでそれ以上何もないものだったんですが、どうしてもこの料理が忘れられません。
というのも、僕はEプロデューサーに言われて一生懸命、長野のうまいもの、珍しいものを探したのですが、こんなのでいいの?って感じだったからです。だってちらしずしに豪華な具は何もなく、デンブとか紅しょうがとかしかのってないんですよ?あまりの簡単さに笑いさえこみあげます。
でも、ここの地域は昔、米が採れなかったので、白米自体が大変なごちそうだったというのです。それにご出演いただいた野口さん3名(みな他人だけど地域的にみんな「野口」さん)の温かいこと。優しくしてくれたとか何かくれたとかじゃなくて、笑っている顔がとても温かいのです。しわくちゃの顔をして笑っちゃって、ときどき話が噛み合わず「これは山で採れるんですか?」「山じゃ採れねな」「どこで採れるんですか?」「畑で採れる」「そういうのを山で採れるっていう意味だったんですが...」なじじばば野口さん方と、シンプルすぎる料理、こういうものでご飯がうまく感じるのも青いようですが素敵な話です。ぜひオンエアでその雰囲気を感じて欲しいです。

馬肉料理さて、3日目には伊那市に着きまして、馬肉料理をいただきました。伊那は馬肉で有名だそうですが、何せ食に無関心だった僕のことですからそんなことも知らず、東京に出てから食べた馬肉のイメージしかないので、霜降りかと思いきや、伊那の馬肉は赤身なんです。
マグロにトロと赤身があるように、馬肉の赤身もそれに似ています。実は、赤身には赤身にしかないうまさがあって、脂もないしウマいんですよ! ウマい馬い。寒いと思ったあなた!正解。馬肉は体を冷やす作用があるので食べすぎには注意です。 とまぁ今回もいろいろあったロケですが、前半勢いよ過ぎて文章が厚くなってしまったのでこのへんでお開き。次はどこに行けるか、どんな人や料理に出会えるか楽しみです。
次回の「つまみぐい日記」もお楽しみ!!

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