ADのつまみ食い日記

第9回 ADのつまみ食い日記

くいしん坊!万才 ADのつまみぐい日記(栃木・茨城編)

早いもので今年もあと半月、2009年もいよいよ大詰めとなりました。
とはいってもTV業界ではここからが正念場、レギュラーの番組に加え年末年始の特番やら、その間にクリスマスやら忘年会やらなんやかんややっていますと時間がいくらあっても足りないというか、金で買えるなら時間を買いたいほど忙しくなっていくのがまぁ通年でございます。 そういうわけで「くいしん坊!」のロケに出ると、一般の方の生活の時間に身を置けるのがひとつの楽しみでもあります。(いや、もちろんロケ自体は厳しいスケジュールで自由な時間もないので誤解しないで頂きたいのですが)まぁそういう時間に寄り添える感じがホッとするといいますか。というわけで今回は、北茨城と栃木は宇都宮の2県のロケに行ってまいりました。

アンコウのどぶ汁まず1つ目は、茨城名物のあんこう、それも「アンコウのどぶ汁」という、行く前から私が大変楽しみにしていた料理です。私はアンコウなど食べたことはないので、それだけでも楽しみな上、事前情報として、EプロデューサーとOディレクターに「どぶ汁」のだいたいの作り方を聞いておりまして、その作り方たるや通ならずとも垂涎もの、水を一切加えず、大好きなあん肝だけで濃すぎるスープを作るというので期待していました。食べてみると話に聞いていたほどどろどろではなかったのですが、濃厚な味とアンコウの身のぷるぷる、そして味がしみたネギと大根がまた格別にうまいのです。さらに鍋の残りでおじやが最高でして、私、小躍りしたりして。
今回、アンコウをさばく際に「吊るし切り」なるパフォーマンスを拝見いたしまして、その様は若干エグくとも、漁師の男気あふれる素晴らしい儀式でした。
あんこう さいこう。

アンコウのどぶ汁  アンコウのどぶ汁  吊るし切り

次に平潟港でイカ料理をごちそうになりました。長野の山奥で育った私は、今でこそイカに対して「嫌いではないけど好んで食べたいと思わない」程度で済んでいますが、その昔子供のころは「どちらかというと嫌い」というスタンスでおりました。というのも、長野のイカは「ほど良くでなく、ほど悪くかたい」「むにゅっとしていて気持ち悪い」「噛み切るの?え?最後飲むの?」という感想がピッタリで、はっきり言ってまずいのです。刺身の盛り合わせにイカがのっていると、嫌がらせにしか思えませんでした。私なりの解釈ですと、長野は内陸地なので運送に時間がかかり、新鮮なイカでない為、あんまり美味しくはないのか?!と思います。だから親が東京に出てきたときは(困ったことによく出てくるのですが)、必ず「魚が食べたい」と言いますし、「東京の魚はうまい」と言います。私も同感ですが、この前人に笑われました。心外です。

イカの肝揉みしかし今回は本場のイカですし、好奇心から一応食べてみたところ、うまいじゃないすか、ちきしょー!
イカの肝揉み(「きもみ」と読みます)という塩辛に似た食べ物、イカの身を細く切り、そのご自身の肝とたたいて和えてうまく食っちゃおうという、よく考えると残酷な料理ですが、これがうまい。そもそも私は塩辛が嫌いでありまして、あんな磯臭いものに「むにゅっとした気持ち悪い食感」をプラスした海のある県からの拷問薬と考えていたので、それと見た目が似ている肝揉みもちょっと抵抗ありました。ところが、「なんか磯臭くないね、あれ?イカって噛みきれるんだ...はは...ハッピーな料理だ」と気付いたらバクバク食べていました。

イカの丸っぽ煮さらにイカの丸っぽ煮という、イカをそのまま丸ごと鍋に入れて味付けて煮たものが最高にハッピー。輪切りにして食べるのですが、イカの胴内に残ったワタやスミや肝が熱で溶けだし、スーパーマイルドに混ざり合ったこの一品は今回のロケで1番の逸品。最高にイカした味でした。



常陸大黒お次は常陸大黒(ひたちおおぐろ)という豆です。ハナマメの突然変異の品種改良で、まだ茨城から外に出していない新しい豆とのこと。1粒1粒が大きく、碁石くらいの大きさです。またしても私の好き嫌いなのですが、豆って若者にはウケないんですよ。「好きな食べ物は?」「豆」「シブいねェ」ってなってしまうのは仕方がないことです。私なりの解釈ですが、豆が若者に人気がないのは、まずおばあちゃん(どこの家でも)が作ってくれる煮豆が甘過ぎ。いや、分かりますよ、昔は砂糖が貴重だったから甘ければ甘いほど喜ばれたっていうのは。でも今の流行りではないですね。そして1粒1粒口に運ぶのがめんどくさい。なぜか豆って1粒1粒食べますね。箸で一気に掴めないですし、楊枝でもそうですし。それがめんどくさいので今どきのファーストフード世代にはウケないのでしょうか。

常陸大黒のサラダとにかく私もあまり豆に積極的な好意を持っていなかったのですが、この常陸大黒はいいですね。まずデカいですもん。数粒で「食べた感」があります。味付けも良かった。何より、豆サラダというのにちょっとビックリしました。サラダに豆って組み合わせもそうですが、豆がトマトくらいの存在感を出してるのも初めはギョっとしました。食べたら意外なことに豆が塩茹で。これがレタスとかドレッシングとかに合っちゃうんですけどね。

柿もち2日目には茨城を離れ宇都宮に行きました。あいにく得意の雨でしたが。
まずは「柿もち」という昔はこの辺りでよく食べられていたというお菓子(?)です。柿を練り込んだもちと考えて頂ければ何となくイメージできるかと思いますが(ちょっとうまそうでしょ?)、なんとこの柿もち、砂糖を一切使わずに甘みを出すという代物。さらに使用する柿は普通に食べる柿でなく、渋柿を使用し甘さをどっからかひねり出すという、陸上の為末選手でも驚きのハードルの高さ。


柿もち で、実際に食べてみると、思った通りそんなに甘くないんです。甘くないね世の中は。でも、昔の子供たちはこれを「おいしいおいしい」といって食べていたんですから。戦後の貧しい時代が偲ばれるハートウォーミングな逸品でした。


鮎のくされずしさて、ラストを飾るのは今回Eプロデューサー一押しの「鮎のくされずし」。何と10年前から温めてきた企画というから僕もさらりと流せません。名前から予想がつくように、すごくいい匂いがする食べ物です。ははは。


鮎のくされずし 実は今回のロケの1週間前に、作り方を撮影しに事前に伺ったんですが、もう最高!!7月から漬けてある鮎を壷から取り出すと、キツい芳香とともにハエが寄ってきまして、いつもは俊敏に「やりますよ」と率先して動く私も、なぜかこのときばかりはその気が起きず、「あ、おかあさん、そこお願いします」と口しか動かないのだから不思議です。カメラのTさんも、いつもはカメラ前の皿を自分で手を伸ばして微調整するのですが、どういうわけかピントを合わせ、レックボタン(録画ボタン)を押すことに集中し切っておりました。そして一人うしろでEプロデューサーが少年のような顔でニヤニヤしておりました。
この日は帰りがけに、鮎の漬けた汁がカメラの三脚に付着するという僥倖がありまして、Tさんがフェイスティッシュ2枚使ってこすりにこすったのですが、あの強烈な御香りがとれず、車の中がカオスと化したのも特筆すべきことです。

鮎のくされずし さて、本番の日、恵みの雨の中、寒さと雨音を嫌って部屋を閉め切らねばならず、閉口気味の他スタッフを横目に、Eプロデューサーとともに僕とTさんはニヤニヤしながら松岡さんのリアクションを伺っていますと、なんとあの方ペロリと食べてしまい、「うまい」と仰る非凡ぶり。これにはまいりました。そこで僕も、毎日食べるものでもないし、今回一度きり、毒を飲むつもりで試しに食べてみましたところ、匂い通りのお味で泣きそうでした...。

ということで今回は茨城・栃木に行ってきましたが、次回はいよいよ今年ラストのロケ。最近ロケの間隔が短く、この日記を書くのが追いつかなくなってきてしまいましたが・・・。
それでは皆さん、よいお年を。来年も「くいしん坊!万才」、そしてこの「つまみぐい日記」を何卒、よろしくお願いします。

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