ドラマプロデューサー 橋本芙美 第1制作部。キャリア10年。「メイちゃんの執事」「フリーター、家を買う」「マルモのおきて」などのヒット作をプロデュース。

ドラマプロデューサー 橋本芙美

── 共同テレビというのはどういう形で見つけたの?

橋本 制作会社で調べていたら、大学の就職活動コーナーで、各業界の本やウェブのページがあったりして、それで探していたら。

── テレビドラマは好きだった?

橋本 好きでした。

── 英語劇(サークル活動)より好きだった?

橋本 あ、大学時代はあまり見てなかったんですけど(笑)。ほとんどテレビは。

── テレビはいつごろ、どんなときに見て。

橋本 小中学校時代が一番見ていたんですよね。だから小学校5~6年のときがちょうど『101回目のプロポーズ』とか、中1のときが『振り返れば奴がいる』だったんですけど。

── ああ、『振り返れば』ね。

橋本 『YAH YAH YAH』をみんなで歌っていた気がする(笑)。

── 若松さんですね、監督が。

橋本 そうですね。

── あのときそんなに小さかったなんて、子供だったのね。

橋本 そうですね。『東京ラブストーリー』が小学校の時で、その後、観月ありささんシリーズも結構見てました。

── プロデューサーという仕事って一言でいうとどんな仕事なんだろう。

橋本 何というか、サービス業じゃないですか、うまく言えないですけど(笑)。

── サービス業?

橋本 相手が求めるものに応える、というか…それは作品としてもそうだし、普段の仕事や現場での振舞い方としても、ですね。というか、この業界で働く方は、みんなどこかそういう意識はあるんじゃないかと思います。それとは別に、プロデューサーとは、作品における全ての責任者ではあるんですけど、でも一番上に立っているということではなくて、一番上に立っているように見えて実は一番下にいるみたいな、私個人的にはそんな感じがします。何ていうんですかね。作品を作る過程において起こる全てを受け止めた上で、判断したり決断したりして、何があっても進めていかなきゃいけない立場というか。一言ではちょっと言えないかもしれないですね。プロデューサーが普段やっている仕事を具体的に1つ1つ挙げたら長くなりますね(笑)。とにかく全体に関わってるし、雑務もあるし、という感じです。

── ディレクターに演出を任せるということは、直接かゆいところをかかないというか一歩隔たった感じというのは、そのあたりというのはプロデューサーの人というのはどう考えているの?

橋本 現場の絵を実際につくるのは監督だなと思いつつ、脚本づくりや、仕上げ編集、全体的なパッケージ感や広報戦略的な部分、あと例えばタイトルバックはこういうのがいいとか、音楽はこんな感じとか、他にも色々と結構口出ししてがつがつ入っていく方だとは思うので、そういう意味では自分も一緒にそれを作っているなという意識ではあるんですけど、でもやっぱり、ドラマにおける人間の掘り下げ方やストーリーの見せ方、映像の切り取り方、キャストをより魅力的に見せる方法みたいな部分などはやっぱり監督の力が大きいと思います。

── 家庭に帰るとご主人は監督でしょう。

橋本 そうですね(笑)。

── だから立場の違いみたいな話というのは夫婦ですることはある?

橋本 そうですね。逆にプロデューサーとディレクターという違う立場なので、その方が話が盛り上がるというか。多分これがディレクター同士だったら場合によってはぶつかるだけだったかもしれないですけど、プロデューサーの立場としてはこう、ディレクターの立場としてはこう、みたいなのがお互いに何か面白いというか。

── すごく身近なところにディレクターの代表みたいな人が1人いるわけだね。

橋本 ドラマや映画づくりに関してはもちろんキャリアが上で大先輩なので、私が教えてもらうことが多いんですが、それとは別に、時々私がやっていることを見て、プロデューサーってこんなことまでしなきゃいけないんだ、こんなに雑用があるんだ、みたいなことは、新たな発見として言っていましたけど(笑)。あとは普通に映画を見に行って自然とあーだこうだ意見を言い合えるのは楽しいですね。

── 必ず、じゃあ、一緒にご覧になったときは何かそういうことって。

橋本 帰りながら、飲みながら、あそこが面白かったとか、あそこは何か変だよねとか、自然とそういう話になるんですけど。あと家でテレビドラマを一緒に見ていても、私はここが面白いと言うと、えーっみたいな話になったりとか、この俳優さんいいよねとか、そういう感じにはなります。

── プロデューサーという職業を、やってなかったら味わえなかったような体験を2、3聞かせてください。

橋本 単純に、例えばドラマの題材によって、たぶん知り得なかった人と知り合える。『海猿』でいうと、海上保安庁の方々のこんな世界があるんだという初めての出会いがありましたし。『フリーター、家を買う。』のときは、土木関係の(略)建設現場に行って、1日観察させてもらったりとか、そういうのがものすごく面白くて。こういう生活や人生があるんだという、今まで全然触れたことのない業界の人たちに会って、それも人間の人生だなというのを知り得るのはすごく楽しい。

橋本 あとは、震災があった直後の『マルモ』はすごく特別でした。震災の翌日がクランクイン予定だったんですね。3月12日だったんですけど、やっぱりあの日は深夜まで帰れないスタッフやキャストが続出だったので、1日だけずらしました。撮影を続行していいのか、色々なジレンマがありましたが。インしてからも交通機関が混乱したり、例えば小田急線も新宿―経堂間しか動かないときがあって。その先に住んでいたあるスタッフが、でも自分がいないと現場が止まっちゃうよという意識で、必死に自転車をこいで来てくれたりして。それから、車輌部が毎晩、撮影後の夜中にガソリンスタンドに並んでガソリンを入れてきてくれたり。そういう姿に逆に励まされたというか、スタッフとキャストみんなが笑顔で毎日現場にいてくれたことにすごく励まされて、じゃあ自分も笑顔でいようと。
でもそれが放送して、被災地の方々から、『マルモ』を見て元気になりました、といただけたことが、本当にやっていてよかったなと。それを信じてやっていて良かったなというのが最終的に実感としてあって。それは何というか、テレビドラマを作っている本当の意味というか、ドラマ見て、明日も頑張ろうと思えるという、娯楽の意味みたいなものが初めて実感できた瞬間だったんですよね。単純に豊かさの先にあるエンターテインメントというだけではなくて、日々の糧となるという意味での娯楽ということが初めて実感できたのが『マルモ』だったんですね。

── 結婚されているということになるんだけど、生涯この仕事をやっていきたい?

橋本 そうですね。今は32歳で、ちょうど共テレ入社10年を過ぎようとしていて、次の10年、例えば42歳になったときに、自分はどうしているんだろうって初めて意識したんですよ。今まではがむしゃらに目の前のことをやってきた感じがあったんですけど。その次の10年、健康でいられるのかということもありつつ、色々な意味で今からの10年、自分はどうすべきかとか。今でもまず目の前の求められたことには応えていかなきゃというのがありながら、より先も意識するようになったというか。でもたぶんこの業界に入ると思うんですけどね、おそらく。何しているんだろうな。

── 何か働く現場として、ほら、一般的な話かもしれないけれども、やっぱり共稼ぎしているわけじゃないですか。そんな中で、お子さんができるかも分からないし。そういう環境になった場合に変化していったときに、それでもやっぱり何かしら……。

橋本 そうですね、たぶん仕事はしていると思いますね。もちろん子供は欲しいと思うんですけど、それはもうできたタイミングで、1回休んでもいいと思うし。

── 家事とかできないでしょう。

橋本 家事に関していうと、時間がある方がやるみたいな状況で。旦那の方が撮影で1カ月、地方へ行っちゃうときもありますし。お互いが忙しいときは、洗濯はするけど干してねとか、じゃあ畳んでおくねとか、それはお互いに。

── それをうまくバランスを取られて。

橋本 はい。今は私が連ドラ中でもの凄くバタバタしていますが、旦那の方は映画の撮影が終わって、この時期はちょうど仕上げ編集だけなので結構家にいる時間が多いんですよ。それで今は、掃除や炊事や洗濯や何か業者さんの立会いとか家事の95%は旦那にやってもらっていますね(笑)。申し訳ないくらいに。本当に感謝してます。(略)逆に旦那が現場中はそれが逆転して、私がご飯を作ったり、ロケの出発場所まで送っていったりとか、とにかく時間がある方がやっている感じですね。もし子供ができたらそれはどうなるのかわかりませんが。ちなみに、たまたま『マルモ』のときが、向こうも『ワイルド7』という映画を撮っていて、ちょうど忙しさがぶつかったときであって、そのときはさすがに家の中が少し荒れたんですけど(笑)。

── 何かで見たんですけど、犬を登場させる場面…

橋本 あ、そうですね。ちょうどムックに似せた犬を1匹作って。みんなで「ガチャピン」って呼んでました(笑)。縫いぐるみで作っていたんですよ。万が一、例えば引きの画とかでも使えるかなと思って1回作ったんですけど、やっぱり本物と質感が違うので全然画の中では使えなかったんですけど。でも逆にスタンドイン、テストのときに使えて、それを本番直前までムックの立ち位置に置いておいたんですよ。世良さんと比嘉愛未ちゃんのシーンだったんですけど、誰も気付かずに、よーい、本番、はーいと──