ビデオエンジニア 川崎淳 制作技術部。キャリア19年。スタジオ、中継などのビデオエンジニアとして活躍現在弊社3D技術を開発中。

ビデオエンジニア 川崎淳

川崎 何ていうんですかね、3Dの一番難しいところというのは、人に害を与えてしまう可能性があるというのが一番ポイントなんですよ。今までずっと歴史の中で。

── 害?

川崎 人体に影響を与えてしまうような効果も引き起こしかねないのが3Dなんですね。要は、3Dの映像を見せるって何をやっているかといったら、脳に錯覚を起こさせているだけなんですよ、飛び出ているという。これを利用した手法なんですね、3Dって。なので、脳に変な情報を与えてしまうと、誤情報が人間に害を与えてしまう。要はちっちゃい子とかにそれをずっと強要してしまうと、あまり影響はよくない。

── 3Dというのは微妙なずらしなんですか、分かりやすく言うと?

川崎 そうですね。要は人間の目が右と左がずれているということをカメラでも利用して同じことをやっていると。

── つまり映像の方で。あれは2台で撮るんですか、基本的に?

川崎 そうです、はい。

── それをわざとずらして出すみたいなこと?

川崎 そうですね。

── そのずれの加減によって健康に害が出る?

川崎 そういうことです。

── 初めて知った。むちゃくちゃ面白い。面白いと言っていいのか分からないけど。

川崎 なので取り組むには相当危険性を。

── 危険なんだ?

川崎 はい。

── それでもし事故が起こったら、例えば放送して事故が起こったら、ある意味、責任を取らないといけない?

川崎 過去に僕が例を聞いたのは、やはり子供が見てちょっと目が、開きが戻らなくなっちゃったとか、そういう事例は聞いているので。なので、やっぱりこれに取り組みにはきちんとした技術を入れなきゃいけないということで、うちの部でも用意したんですね。

── 高そうだ。

川崎 高いです。

── 高いでしょう。いくらぐらい?

川崎 本体だけで3,000万円位ですね。

── 高え(笑)。

川崎 はい。カメラを載せると全部でトータル5,000万円ぐらいです。

── うわあ。それはやっぱり実績があるから?

川崎 そうですね。そのときも、やはり技術としては最高峰だといわれていたので。

── ああ、世界最高峰で。

川崎 はい。

── それで、まず人体に害があるかもしれないというリスクがある、なおかつ高い。それでも入れようと思ったのは何で?

川崎 うちのプロダクションとして、会社としても、やはり技術ということに関してはあらゆる技術を習得しておかなければいけないし、時代の流れにも乗らなきゃいけないということで、やっぱり取り入れなければいけないと。

── 人体に害のある可能性のある危険なものだというのはね。

川崎 僕的にはそれは勉強したんですよ。3Dを取り入れるにはということで、どういうものなのかというのをまず技術よりもどういうことなんだというのを勉強した上で、これは危ないなと。なので僕は最初は正直、反対したんですね。なんですが、やっぱり会社としてはやっていこうということがあるので、だったら一番いいものを入れてくれと言ったんですよ。なのでお金は掛けられる。

── お金も掛けるけれども、研究もしっかりやって。要するに本腰でやらないと、生半可にはできない?

川崎 ええ、そういう理論を知らないと。技術だけじゃなくて、どうなったら人体に害があるんだとかいうことも把握していないとできないですから。

── それが何年前のことですか?

川崎 それが2年前ですか。

── じゃあ、この2年間はそれをやってきたと?

川崎 やってきましたね、はい。

── 機材はそれで買った。でもそれで済むものじゃないんでしょう、たぶん。

川崎 そうですね。その機材は自分の知識を生かしてくれる機材なので、あくまでその知識がなければ害を与える絵にもなってしまいますし、セーフティーな絵も撮れるしという。

── その機械を買う前から、3Dを実際に例えば借りたりして体験というのはやっていたんですか?

川崎 そうですね、いろいろなところで。

── 試写とか?

川崎 ええ。いろいろな、いいものも見ましたし、だめなものも見ましたし。ああ、こういうものがだめだと。

── その違いというのは立体になってないとか?

川崎 もう単純に気持ち悪く感じました。人体的に。気持ち悪いと。何か、わっという。もう掛けていられないというようなものも見たりとか。

── ああ、そうか、眼鏡を掛けるから。

川崎 ええ。

── その差は何ですか?

川崎 いろいろな項目があるんですけど、要は一番大きいのは右と左で違っちゃいけないというのは、これは一番前提なんですけど。

── え、どういうこと?

川崎 右と左で明るさが違うとか、右と左で色が違うとか。

── ああ、バランスが完ぺきに出ていないといけない。

川崎 はい。あとは縦にずれると。人間の目ってやっぱり同じ目線で見ているので、この映像が、これが上下にずれているとすごく人間、気持ち悪く感じるんですね。

── 両方縦のこれを合わせるとすごい簡単そうに思えるんだけど、実際ずれている場合がある?

川崎 そうですね。何が難しいというと、カメラにズームが付いているので、ズームレンズが一番難しいんですよ。ズームがなければカメラのポジションを変えればいいだけなんですけど、ズームってどうしても光軸ずれがあるじゃないですか。多少なりとも光軸ずれが絶対あるので。

── つまり、カメラワークをやるためにズームレンズを付けていると。つまり2台連動しないといけないということですか?

川崎 そうです、そうです。

── 連動は機械的に連動させるんですか。

川崎 はい。

── それにはチェーンか何か付いているの? ひもか何か。

川崎 いや、電気的にです。要は、同じ信号を2台のカメラに送ってモーターを回してやるということですね。

── それでぴったり合わないといけない。

川崎 そうですね。

── ああ、連動しないといけないんだ。そうだよね、考えてみれば2台。

川崎 そうなんです。アイリス、ズーム、フォーカス、あとは動きですね。位置関係も成立していないといけない。

── この距離感。

川崎 はい。例えば同じ広い画を撮っている場合と、ズームして寄った場合とで、右と左のずれ、カメラのずれが3Dの立体感なんですけど、ズームするとこのずれは必然的に大きくなるんですよ。

── ああ、そうか、そうか。

川崎 ずれが大きいと人体に害を与えるんですよ。

── ああ、その危険なポイントに近づいていくと。

川崎 はい。なので、ズームしたときはこのずれを少なくしなきゃいけないんですよ。

── ああ、連動して、こう。

川崎 カメラを狭めなきゃいけないんです。連動はしてないです。これは実際に3Dのこの技術をやる人間を今、プラーと呼んでいるんですけど、このプラーの人間がズームに合わせてそのカメラを動かしている。

── 手動でというか、スイッチで。

川崎 はい。

── まあ、電気スイッチなんだろうけれども。じゃあ、それはもう完全に職人としてやらないと気持ち悪い映像ができちゃうと。

川崎 そうですね。

── それって、オートではできないんですか?

川崎 オートはまだそこまで技術がいってないですね。

── ああ、そういうことなの。初めて聞いた。すげえ面白い。
それは日本全国そうなんですか?世界、どこでも。今それが最前線なの?

川崎 はい。

── それは共同テレビが最近始めたからそういう初期の苦労をやっているというんじゃなくて、結構みんな苦労している?

川崎 じゃないですかね。結構最先端のものを入れましたので、そういう意味では。

── ああ、そうか。でも、映画作品が作られているわけでしょう、現に?

川崎 はい。

── 克服しながら何とかかんとかやっているというのが現状なんですか?

川崎 そうですね。ただ、最近ちょっと噂を聞いたのは、今度の『アバター』2、3とかいうのが決まって、何かキャメロン監督はそれ専用の3Dスタジオをつくって、新しい3D技術を取り入れていくという話をちょっと耳にしたので、また新しい技術が生まれるんじゃないかなとは思っているんですけれども。

川崎 今、3Dで撮っているのは。撮っていたというんですかね。ここ2年で撮った作品的には、かなりあるんですけど、ライブですね。

── 音楽ライブね。

川崎 ブルーレイとかの3Dとかにする音楽ライブはわりと多いパターンと、あとスポーツだとK1とか。格闘技。

── 格闘技は面白そうだな。

川崎 ええ、格闘技は結構臨場感があるんですけど、ちょっと問題があるのは、ロープがある格闘技はリングが一番前に出てくるのでちょっと違和感があるんですね。実際に選手を見たいのに。

── ああ、そうだ、ロープがいつもここにあるから。

川崎 人間は意識するとここに何か物があろうがそっちに目を入れるんですけど。

── ああ、下手に3Dだから。

川崎 3Dはこれを見させるので。前にあるよって見させるので、ちょっと何かこの辺がかゆくなったりするんですね。

── 本当は、理想はロープよりもレンズを前進させたいんでしょう?

川崎 そうなんですね、はい。

── どれぐらいの大きさがあるんですか?

川崎 いや、かなり大きいですね。

── これで教えてもらうと。

川崎 うちのその買ったカメラが、普通のENG一体型のカメラって分かります?

── はい。

川崎 あれのカメラが2台が横に並んでいるんじゃなくて、縦に、上下に付いているんですね、こう。1個は普通に付いていて。

── え、上下なの?

川崎 ええ。もう1個はこう縦に付いているんですよ。

── え、だってこうなんでしょう、考えるべきは?(横に2台を示す)

川崎 それはなぜこういう技術が生まれたかというと、基本的にカメラが大きいので、カメラを横に並べたときに横のこの中心、いわゆる目の代わりになる部分の幅が人間の目よりも絶対広いんですよ。

── あ、このぐらいになってしまうから。

川崎 はい。そうすると。

── じゃあ、このラインでこうなって、ほんのわずかこうなっている?

川崎 そうなんです。上下に重ねることによってゼロに近づけるということができるんですね。

── ああ、数センチに、3センチぐらいにできるんだ。

川崎 はい。

── 本当は何センチぐらいを目指しているんですか?

川崎 6.5というのが。

── 人間の目の幅。

川崎 幅なので。

── でも、質問。その上下の差は解消できるの? それで。

川崎 これは鏡を使って、ミラーを使って。

── そういうことなんだ。面白過ぎる! 何だ、早く言ってくれればいいのに。ずっとその答えを言わないんだね。うまい、語り方がうまい! ねえ、すごい疑問を抱かせておいて、何気に。うまいな。
上にあるカメラは、じゃあ、下向きにレンズが付いているということ?

川崎 そうです、そうです。

── 面白い。僕が思っていたのは、共テレに入ってずっとテレビをやりながら、テレビも円熟し過ぎて面白くないなとずっと思ってきて。だから、ほら、テレビの創世記で生中継とかいうとばかばかしい失敗があって、生しか撮れなかったという時代でドラマを撮っていたときの話ってめちゃくちゃ面白くてね。僕らの大先輩の時代のラジオからやってきているような人たちが演出家をやっていて、それで一緒にやっていて、それこそ紙芝居とばかにされながらもやっていったらやがて映画を追い越していって世の中の本当にメジャーになっていくというあたりはワクワクするような冒険だっただろうなと思っていたけど、今の話を聞くと、まさに黎明期で始まりをやっているわけですね、それはね。

川崎 そうですね。

── その辺が面白い。

川崎 まあ、3Dというのはわりと、いつも3年ごとぐらいに波がやってきて何か新しい技術が生まれるんですけど──