ドキュメンタリーに魅せられて

2015.03.30

第2制作部所属 花枝祐樹、今回初めて演出を担当した「ザ・ノンフィクション 転んでも転んでも ~三國清三の上海進出1000日~」がATP賞 優秀賞を受賞した。
早速その時の様子を聞いていると、話しはちょっぴり驚きの展開に、、


-- 初の演出とのことですが、今回の企画はどういった経緯ではじまったのですか?


花枝 同じ部の演出の松木さんが、10年前に2本ほど三國さんの番組を作っていたんですが、今回こういう話があるけどどうだと三國さんの方から話があったそうです。上海に出るんだけどと。じゃあ、やりましょうと言って松木さんが企画をまず通して。当初は多分ご自分でやるつもりだったと思うんですけど、2人で取材に行く中で、いつごろだったかな、きっかけは忘れたんですが、「今回、演出はお前にやらせるから」と言ってくださったんです。


-- 三國さんを追い始めたのが2010年。


花枝 2010年の5月です。いつもの感じで取材をはじめました。


-- 途中から、ご自分が演出するとなったときはどんな感じでしたか。


花枝 できるのかなと思いましたね。やりたいことだからやらなきゃいけないんだけど大丈夫かなと思った記憶があります。


-- やりたいなと思っていたのは漠然とですか、それともすでに自分の中に何か想定があったとか。


花枝 その時点では全然。取材自体も終わってなくて、どう最終的に転ぶかが分かってなかったので、
どういう形になるかは編集を始めてからじゃないと決まりませんでした。


-- 冷静に受け止めていた感じですか?


花枝 はい。どうしようもないので、それについては、中国と三國さんの間の進展をちょっと待つしかなかったですね。


-- だんだん形が終盤に向かって見えてきたときは、どうでしたか。


花枝 フレンチではなくイタリアンで店を出すということになったので、これでちゃんと番組が落とせるのかなという不安と。でも、これ以上のことはもう起こり得ないから、これで何とかやらないといけないんだなと思って、不安なまま編集に入ったという感じです。


-- なるほど。けれども終盤、意表をついた、ドラマチックな展開になったと思うんですけど、それは今までの経験からですか??


花枝 プレビューを編集段階から何度もやった末にたどり着いたのがこの展開というか。
3年間期間があった中で、いろいろなエピソードがあり過ぎて。
取材テープも非常に多かったので、どこまで盛り込むかというのでいろいろな取捨選択をしてプレビューを重ねていって、最終的にそぎ落とされてこういうストーリーになったという感じですかね。
だからそこに導いてくださったのは、松木さんだったり、あと局のプロデューサーだったりが、こういう方が面白いんじゃないかと意見をいろいろくださったので、それで編集していったという感じですね。


-- 自分的にはここをカットするのは苦しかったなみたいなところもあるんですか。


花枝 そうですね、ありましたね、いろいろ。三國さんは子供たちにも人気があるんですよ。


-- 三國さんについて少し聞かせてください。


花枝 編集に当たって彼の人生の本とかいろいろ読みましたけど、
常人じゃまねできないような突破力でああいう立場になった人なので。
やっぱり第一線で活躍してこういう名前が通る人って、到底自分たちとか
一般の人ではできないような努力をして、さらに今も続けているんだな
というのがそばで見てみるとすごくよく分かります。
ほかの取材でいろいろな方を見てもそう思いますけど、ああ、やっぱりトップで走り続けて
いる人はそれだけの理由が常にずっとあるんだなと思って。我が身に置き換えると
もっと頑張らなきゃなと思うことがすごくあります。


-- 尋常じゃない感じ。


花枝 そうですね。休まないですしね。絶対妥協しないし休まないし、何かずっとやっているんですよ。
僕だったら1日ぐらい家でずっと本でも読もうかなとか。そういう意識はまったくないから、
この人のようにはなれないなとは思うんですけど。


-- それはやっぱりお料理に懸けている思いが?


花枝 ですとか、あとは、ちょうど今話が進んでいると思うんですけど、和食を世界遺産にしたいというのでもすごく動いていて。
フレンチと関係ないのかなとは思ったんですけど、いや、和のそういうものを1つの文化にして、日本食を広めてということにも注力されてますね。
食育というのも1つテーマであって、子供たちが食に興味を持つようにと自ら番組に出演したり、それで子供たちにも人気なんです。
小学校にも、何十校か、20年ぐらいとにかく小学校に出向いては味覚の授業とか。苦味、うまみとか、そういうのを教える作業をずっとしているんですよ。
味覚の豊かな子供たちを育てないと、結局は育っていった上でフレンチを食べに来てくれないからというので長期的に。
自分のお店のことだけじゃなくて、フランス料理界全体のことを考えてなさっているような人なので。
そういうところまで活動していたらやっぱり時間は足りないですよね。だから休んでないんだと思うんですけど。


-- すごい方ですね~。


花枝 すべてのことを考えていろいろやるので、本当に休まないし。それで別に休める日があっても必ずそういう日は
お店に出て、現場でやっているわけです。
すごい人だなと思います。


-- 並行してやっているんですね。


花枝 そうですね、いろいろなところに飛び回って。
よく電話をかけると着信は海外だったり、もうしょっちゅうなので(笑)。


-- そういうすごい方に出会えたのはラッキー。


花枝 ですね。そういう人を取材できるというのはすごく、自分の中でも宝物になりますよね。
あの人だったらこういうときどうするんだろうとか。勘三郎さんもそうなんですけど、
やっぱり取材していて、2人ともとても性格が似ている気がするんですが、
あの人はこうやっていたとかというのは、今後自分が生きていくに当たって、
どこかで絶対的に影響を受けると思うので。


-- お2人はどんなところが似ていますか?


花枝 先ほども言った、休まない、仕事に厳しい、妥協は絶対しないというところですね。
あと、自分の仕事だけじゃなくて、全体。
勘三郎さんだったら歌舞伎界、三國さんだったらフランス料理界のことも考えて動いている。で、怒ると怖い。

-- 取材とかで密着すると愛着がわくというか、その人びいきになったり、


花枝 はい、なりますね。大好きですね、やっぱり。


-- その人のニュースが流れるともう夢中で見たりとか。


花枝 そうですね。


-- ビッグな方がいっぱい周りにいますね。花枝さんはドキュメンタリー志望なんですか。


花枝 いや、たまたま。最初はバラエティーとかをやりたいと思って、転職してきたんですけど。それで。


-- 転職?…もともとは??


花枝 銀行で働いていたんです。


-- そうなんですか!!?


花枝 銀行員。


-- えー、そこから。


花枝 そうですね。


-- なぜ??


花枝 いや、こっちの仕事をしたかったんですけど。


-- それで変わってきて、バラエティーがしたくて。


花枝 バラエティを最初1カ月ぐらいやったんですけど、その後手が足りないということで
「勘三郎スペシャル」に就けてもらったところからそのままずっと。
その回がすごく感動する作品だったんですよね、で、こういう番組を作りたいなと思うようになって、そのままずっとこの班でやらせてもらって。


-- 出会いですね。


花枝 そうですね。


-- 話しが作品に戻りますが、私、何か記憶にあったんですよ。
地震でお店が揺れてワインが割れて全部床にばーっとなっていたシーンを。
まさにその時の放送を見ていたんだなと思って。印象が強かったんだと思うんですが、
ドキュメンタリーで意識する手法みたいなものはあるんですか??


花枝 手法。


-- 切り口というのか。


花枝 松木さん達も教えてくれていることなんですけど、ドキュメンタリーとはいえ飽きさせない、どうやったら引き付けて次を見たくするかという演出を
何度も何度も入れて飽きさせないものを作るということをずっと意識していかないといけないのかなと思います。

-- 完成してみてこの出来栄えはどうですか。


ドキュメンタリーに魅せられて

花枝 このストーリーにするとなったら、やっぱりこういう形になったような気がします。ほかに何かが入る余地があったかといったら、45分にはどうしても
納まりきれないので、この映像いらなかったなとかいうのはないですね。
ただ、見た方の感想として、最後それで三國さんが満足しているように見えたから、
あくまでそれは通過点でまだ先にやろうとしているという。
ナレーションでちょっとは言っているんですけど、とにかく第一歩でしかないと
いうところをもうちょっと強調した方がよかったのかなというのは思っているんです。


-- 賞を取ったときはどんな気持ちですか。


花枝 もちろんうれしいんですけど、ただ、恐縮しきりという感じでしたかね。
ネタとして、ああ、これはいじられるな、いっぱい。というような気もして、実際そうなってるんですけど(笑)、
とはいえ、松木さんを含め中身に関して助言や指導をもらって。スタッフも素晴らしいメンバーでさせてもらったというのもすごくあります。それはやっぱり松木さんとかが探して育ててきたような人たちなので。そういうチームを自分でも見つけてつくっていかないといけないんだなとも思います。


-- 次の企画は考えていますか?


花枝 そうですね。ただ、なかなか企画として通る番組となると、それなりの名前がないととか思ったり、
何か出来事がないととか、そういうのもどうしても。


-- リサーチからですか。


花枝 そうですね。本を読んだり、ネットで調べたりとか、いろいろな情報を得ていかないと。
出来事ってなかなか分からないですよね、起こってからじゃ遅いし。


-- 起こりそうな人を探さなきゃいけない。難しそうですね。


花枝 そうですね。やっぱり自分が興味あるものじゃないと、
無理やり、通ればいいやというものでもないような気がしますし。


-- いま、全体的に業界の大変さばかりが目立ってしまって、この業界に遠慮ぎみな若者も多いようですがどうですか?


花枝 でも人それぞれですからね。僕は仕事が楽しければ人生が楽しいので、それ以上の価値観はないですね。


-- いろいろ不安になったりしませんか?


花枝 まあ、そこまで考えていたら銀行も辞めてないですしね。


-- 確かに(笑)つらい時期はありましたか?休めない日々が続いたりとか。


花枝 最初のころですかね、あったとしても。でも銀行も休めないですしね、意外と大変です。今この仕事をしていても、普通の会社員の方が大変だなと僕は思いますけど。会社員のときの方が大変だったので。


-- 自分に合った仕事に出会えたということですね。これからずっとドキュメンタリーで生きていこうと?


花枝 はい、まずは。でも色々やってみたいです。