ドキュメンタリードラマ『奇跡のバックホーム』インタビュー

第2制作部所属の吉村慶介。今回部署・ジャンルの垣根を越えてドキュメンタリードラマ『奇跡のバックホーム』を手掛け、高い評価を得ました。制作にあたってどのようなことを考えていたのか、話を聞きました。


◆一つの作品でドキュメントとドラマを同時に考えるのは難しいと思うのですが、どのように組み立てていくのですか?

ドキュメントパートは藤原さんというディレクターがいたのですが、一番のピークは最後の奇跡が起きた瞬間に向かっていく番組だと思っていたので、そこを感動できるために必要な要素は何かということ。で、ドラマ部分で家族の思い、家族に支えられていたというところが映像化できるし、ドキュメンタリー部分で実際にまわりの選手が横田選手を本当に愛してたんだなみたいなことが伝えられたと思うので、その二つが壮大な振りになって最後の奇跡のところにいくという考え方ですかね。
確かに斬新だなとは思いました。原作の本もありましたけど、本当に贅沢な振りを作らせてもらってるなっていう。結局本物には勝てないかなっていうのはありましたけど、それを補完をすることはできたかなというか。
あとはあまりジャンルにこだわる必要はないかなって思っていて、結局ドラマとかバラエティとかドキュメンタリーって手法の違いだけであって、何か表現したいときにベストな方法を選ぶということかなって思いますね。尺や予算、ロケの日数などの制約もあってその中でできる分量で組み立てていくという面もあります。


◆主人公が実在していて、しかも若い方なので役者さんは、より緊張されたと思いますが、そういうときはどういったフォローをされるのでしょうか。

間宮さん自身すごく心配されていて、いちばんは横田選手が左投げ左打ちだったけど、間宮さん自身は右投げ右打ちだったので、心配されてましたし、でもそこはすごく上手くやってくれたと思いますし、あとはドラマの撮影前に実際ご本人に会うことができたのでそこらへんはよかったのかなと思います。
役作りについて一つだけ伝えたのは、横田選手と台本作りの時にオンラインで話していると、人柄というか、すごく丁寧で真面目で礼儀正しい人で、周りの人からも横田のためだったら協力しますよとか、横田かわいいとみんなが思っている感じの存在の人だったので、いろんな人にとって弟っぽいというか、愛すべき弟キャラみたいな人なんだなって、そういう人っているじゃないですか会社でも。なので間宮さんにそういう存在ってリアルにいますかって聞いたときに「●●くんですかね」って言っていたので、その"●●くん"を演じるぐらいのつもりでいかがですかということを言いました。具体的に彼の中にあるもので何かアドバイスできないかなと思って。


◆奇跡の瞬間は実際の映像を見せていましたが、あそこをドラマパートにしようとかは思われなかったのでしょうか。

思っていました。ドラマの演出家としてはあそここそ一番ピークだし、かっこよく演出したいなって最初は思ってたんですけど、それは関プロデューサーとも結構議論してて、なんかでも結局エゴでしかないかなというか、いろいろ具体的にシミュレーションもして、こういうカット割りでこうなって...みたいなものを関さんにも見せたりしたんですけど、やっぱり実際の映像に勝るものはないなという結論で。だからドラマは、言葉を選ばずに言うと "贅沢な振り"というか。贅沢な振りで実際の映像を魅せる番組にしようと思いました。


◆オンエアを観た若松節朗監督から電話をもらって涙されたと...なぜ泣いてしまったのでしょうか。

他番組の編集中だったんですけど、夜電話がかかってきて...びっくりしましたね。泣いたっていうのは...泣いたんですけど、笑
電話が掛かってくるなんてめったになかったし、嫉妬したよって、、。
もともと若松監督にあこがれて共同テレビにはいったので、その師匠...というのもおこがましいんですけど...憧れの人から褒めてもらったっていうのは嬉しかったっていう子供みたいな理由ですね。
就職しようと思った数年前、「反乱のボヤージュ」というスペシャルドラマを見て、もともと映画の世界に行きたかったんですけど、テレビドラマでもこういうことできるんだったらテレビもいいなぁと思ったきっかけだったんですね。で、調べたら若松さんが監督で共同テレビの名前があったんで、この会社に入りたいなと思ったんです。
それで入社して一年目からラブコールを送っていたら連ドラに呼んでくれて、一緒に三か月仕事をすることができました。あれは嬉しかったですね。...よかったなぁ笑。


◆吉村さんを当時から優秀だったっておっしゃっていました。

それはまぁ、リップサービスだと思いますけど、優秀じゃなかったと思いますけど僕全然。でも楽しいチームでしたね。若松さんのチームってやっぱなんかやさしいというか...


◆監督が魅力的だと尚更頑張りたいって思いますよね。

そういうリーダーなんですよね、若松さんって。若松さんは才能のある人ですけど自分みたいな能力のない人間はこういうチーム作りをして助けてもらうというか、なんかチーム作りとしても憧れますね、とても。


◆今でも参考にされていますか?

してますしてます、ずっと。


◆そんな憧れの方から褒められるなんて、羨ましいです。

実は僕が一番こだわったグラウンドでのシーンがあるんですが、そこがドラマパートでのクライマックスだと思うんですけど、場所が脚本の段階では土手になっていたんです。
それもなるほどなと思ったのですが、スポーツドラマでどちらかというと男臭い感じで、土手というオープンな場所だと男二人泣くかなと僕としては気になって、で最後その場所ってもっとなんか彼らの野球を感じる場所がいいなって、結構直してもらったところだったんです。そしたらそこについて若松監督が「最後の場所の選び方が素晴らしい」って言ってくれたんです。自分がこだわったところでもあったし、そういう細かいこだわりに気づいてもらえたのも嬉しかったですね。


◆制作するうえで大切にしたことはありますか?

一番大事にしたのは役者さんとのコミュニケーションですね。結構ストレートな内容だったので。いつもコメディばっかりやってたんですけど、ストレートなドラマって割と役者さんに任すしかないみたいなところもあるので、できるだけリラックスして彼らが最大限の力を発揮できるような環境を作ることに心掛けていました。例えば最後のシーンの前だと、間宮さんが一人の時に傍に行って、どういう順番で撮りたいか聞いたら、その時は「アップの時、本気出させてください。」ということだったので、「じゃあアップの時はちゃんと伝えますね」って伝えたりとか。要は何度もMAXでは泣けないっていうことなんです。広い画の時に本気出しちゃうと、大事な寄りの時になんか半減しちゃうと彼の中ではそう思ったんでしょうね。一回しかできないって。結果すごい演技をしてもらえた。なのでそういう会話ができてよかったなと。
そんな感じで、間宮さんとは二人になりやすい環境があって、次のシーンなんだけど...みたいな話がよくできたのはよかったと思います。
監督ってそういう仕事なのかなと思いました。
この作品に限らず普段も、家族の話とかなるべく雑談するようにはしています。


◆今後の目標はありますか?

ドキュメンタリーとドラマの融合は面白いなと思いましたし、今後もジャンルにこだわらずに面白いものを作っていきたいです。
逆にいうと表現したいものがあってそのあとで手法を決めればいいのかなと。
あとはバラエティをずっとやっているので、ドラマでも人を笑わせるというのをもっとやりたいと思っています。ずっと笑いについて考えてきましたので。

フィクションなのでドラマの中で笑いを作るのはすごく難しいと思うし、実際にうまく行っているドラマってすごく少ないと思うんです。笑わせようとしているそれが台本に書いてあるってことが観客にもわかっていますから。だからさむくなることが多いですよね。だからこそ基本的なフリとオチをちゃんと丁寧に作るということや、状況とか人間のおかしさのディテールが大事なのかなと。そこはバラエティの経験をかなりいかせるのではないかと思っています。
あと、脚本にも挑戦したいです!


ーーありがとうございました!