2021年9月ついに企画が通り、念願の吉村ディレクターに演出を依頼したところから、いろいろな人との出会いを活かして番組を完成させ、ついにATP新人賞を獲得した第2制作プロデューサー澤田和平と、その番組「クイズ!カズ&宇治原をぶっ飛ばせ」が優秀賞に選ばれた第2制作演出吉村慶介にお話しを聞きました。
終始、感謝溢れるインタビューとなりました。
◆経験と知識を戦わせるという今回の企画はどのように生まれたのですか?
澤田)僕自身ぶっちゃけそこまで皆さんに評価されていなかったといいますか、失敗の多いテレビマン人生といいますか、出向先でもなかなか上手くディレクター業務ができなくて、怒られ続ける日々。毎週のように松浦さんや、吉村さん、先輩たちが慰めに来てくれて...。
成功体験というよりかは失敗から学ぶ経験の方が多い、そんな20代でした。
それを経て築地オフィスに戻ってからは、先輩の深野さんに"お前はディレクター業務も経験して、多少なりともディレクターの気持ちが分かるようになったのではないか、これからは俺の下でプロデューサー業務を経験するのはどうか"と声をかけていただき、「石橋貴明のたいむとんねる」「石橋、薪を焚べる」にて、関さん深野さんの下でプロデューサー業務の色んな経験を積ませていただきました。
そういった色々な経験を積ませていただく中で、頭で考えることや勉強で得ていく知識よりも素晴らしいものというか、経験した者にしか分からないことがあるんじゃないかなという想いがうまれてきまして。それをカズレーザーさんとかロザン宇治原さんみたいな"知識が豊富でクイズ番組で活躍している芸能人"の方が解けるのかどうか勝負するっていう企画って面白いんじゃないか、ということで関西テレビの吉川さんと作家の市川さんと意気投合して、完成した企画という感じです。
まさになんか、いろいろ失敗してきてよかったなというか。。。
「たいむとんねる」で二年間、関さんと深野さんの下でやらせてもらっていたのですが、二人とも自分から作家さんや局の方々と企画会議をしていて、元を言うと僕はそのやり方を吉村さんから習っていたんですけど、"あ、こういう風に企画会議をやったらいいんだな"というのを学んでいました。「石橋、薪を焚べる」も終わってしまって、そろそろ僕も独り立ちしたいなと思っていたりで、色んなタイミングが合った中でのスタートでした。
その時に関西テレビ吉川さんと引き合わせてくれた関さんからも、口では直接言われていませんが、"そろそろ独り立ちしろよ"というメッセージがあったのかなと思います。
吉村)仲人のような方なんですよ、関さんて。僕もいろんな方を紹介していただいてます。
◆ディレクターとエキスパートさんで一つのクイズを探し出すというスタイルは珍しいですね。
吉村)一人の専門家の方から一つのクイズを出すっていうっていう企画だったんですけど、経験上、専門家の方たちの話ってすごく面白くて、打ち合わせをしている道中に面白い情報がポンポン出てきたりするので、一個のクイズだともったいないなというか、なんかそれ自体をVTRにしようかなと僕は最初から思ってたんです。なのでクイズを探す体をもつことによっていろんな情報を段積み的に出していけるような形にしました。
◆これクイズにすればよかったじゃん!っていうやり取りが面白くて...
澤田)あれはちょうどスタジオリアクションとビタっとハマりましたよね。
吉村)僕らも設計図通りですよね。あれは。
ノブコブ吉村さんとディレクター陣との掛け合いも、"こうなったらいいな"っていうのが、思い描いた感じになってくれました。澤田Pが優秀なディレクター陣を集めてくれたから、できたことでもありますね。
◆優秀なディレクターはどうやって集めたのですか?
澤田)僕のプロデューサー業でいうと、まず企画が通って、じゃあ「尺は何分・予算これくらい」っていうのをいただいて。そして、スタッフ集めになるのですが、吉村さんとこれまで一緒に色んな番組を作ってこられていて、僕もADの頃からお世話になっている方々、山本泰輔ディレクターを始め、関係性としてよく知っていて"阿吽の呼吸で全部できる方"に声をかけさせていただきました。
吉村)みんな結構、「澤田のデビュー作だったら、ぜひやらせてください!」みたいな人たちが集まってくれたんで、それが良かったですね。
有難かったですね。新谷さんも、岩野さんも、阪口さんも。
澤田)「チームワーク」ってそのまま画面に出ると思うんです。意思疎通が気薄なチームだったら出来上がった番組もそうなってしまいがちというか。だから僕は相談しやすいチーム作りをしたいなと。
吉村)それは大きかったかもしれないですね。
澤田)会議という公式の場だけでなく、皆さんロケに行く直前まで吉村さんと直接やり取りしてもらって、本当に細かいところまで詰めてからロケに行ってもらったんです。
というのも、昔、吉村さんがロケ前に"プレッシャーで吐きそうになる"みたいなこと言っていたことがあって。で、"吉村さんでもそうなのか?"って思ってたんですけど、実際僕も番組でディレクターをやらせてもらったら、もう吐くどころじゃなかったんです。本当に。
常に恐怖感というか、撮りこぼしてるんじゃないかとか、こうしたらよかったんじゃないかとか。毎回ロケが終わったらどちらかというとすぐそっちの反省モードになるというか。
ディレクターってめちゃくちゃ怖い職業だと思うんです。僕はもうそのプレッシャーがきつくて。ディレクターにしかわからない、孤独感と責任感と。逃げたかった。とにかく。 "面白いV"という、突き詰めても突き詰められないものを背負ってロケに行ってもらうっていう、ディレクターって本当にすごい仕事だなって思います。
そこで吉村さんと意思疎通が極力できていると、不安は無くなりは絶対しないんですけど、ちょっとでも軽減するかなと。いい番組を作るにはそこのチームワークが大事だなと。ディレクター時代、僕が一番感じていたことでした。
これも僕の経験ですけど、入社した時から今まで、上手くいってる番組といってない番組を下の者の目線で見ていると、上手くいっている時って絶対コミュニケーションがちゃんと行き届いているというか。番組に関わるスタッフ全員が伸び伸びできる環境の方が絶対上手くいっていて。それって上の人の雰囲気作りがもっとも大切で。だから僕は吉村さんが演出されている番組は、皆が生き生きしているの知っていましたし、僕が何か番組をやらせてもらえる時っていうのは絶対そうしないとダメだなと思っていました。
雰囲気が悪いと萎縮するんで。一番僕がそうでしたし。もっと自由に考えられる環境だったら色々アイディアも出せたりしたと思うんですけど、怒られっぱなしだと何も言えなくなるし、何も考えられなくなるし、良いことなんて一個もないんですよね。本当に。
吉村)怒られないための仕事になっちゃうもんね、結局。
◆相談しやすいって大事ですよね。
吉村)僕らだけだと何もできないから、一人で考えるよりできるだけいろんな人のアイディアとか意見を出しやすい環境にするのが一番いい番組になることなのかなぁと。
澤田)でも山本ディレクターが良く言うのは、「吉村さんのチームでやってたら楽しそうですねってよく言われるんですけど、実はしんどいっていうのをみんなに言いたい」って。笑
和気あいあい感はあると思うんですけど...「厳しいですよ」って。
◆仲良しごっこではなく、敬愛しつつもほどよく緊張感のある関係ということですね。
吉村)馴れ合いみたいなのはないですね。みんな本当にプロフェッショナルだと思います。
同じ台本でもディレクターによって全然変わるよねっていう話をちょうど昨日、澤田としてたんですよ。代わりがきかないものだねって。
澤田)たぶんこの企画を、他で考えていた人だっていると思うんですよ。知識VS経験、カズさんと宇治原さんにタッグを組ませて、そこに経験者からクイズを出題するっていう。
その構図を考えていたテレビマンの人っていると思うんですけど、ただこの番組のような最終的な仕上がりには絶対ならないと思うんですよ。
それは吉村さん、関西テレビの脇田さん吉川さん、あとディレクター陣、作家陣の皆さん。
取材に付き合ってくださった経験者軍団の皆さん。このチームだからできたものっていう自負があります。
番組が完成した時に、最後MA室にディレクター陣が全員揃ってくれたんですけど、関西テレビの脇田プロデューサーが「あんまりそういう現場って最近見てなかったな」って。
吉村)そうかもしれないですね。
澤田)全員揃うってやっぱりあんまりなくて。最後どうしても真夜中の作業になってしまうので。そこに皆が揃ってるのって、"チームワークがいいですね"って、言っていただき。
吉村)最後まで見届けたいっていう気持ちだったのかもしれない。責任感で。
澤田)そのくらい皆さん自分のVを愛してくれてたんだと思います。
◆音楽が全部ジブリで、最初ちょっとズルいなって思いました 笑
吉村)全部ジブリにしてみました。笑
ずるいなと思うのはすごく正しいですね。そういう狙いでした。すっと番組に入れるように。一般の方やディレクター陣など視聴者の大半が知らない方が登場するVTRを流す番組だったので、音楽がとっかかりになればいいなと。内容には自信があったので。
澤田)音楽は、一言吉村さんから「今回、全部ジブリで行くのってどう思う?」って聞かれただけでした。で、「めっちゃいいと思います!」って言って。「全部ジブリで行きましょう!」って。でピタッとはまって。
◆その手法はどこかで?
吉村)稲村さんという、そういう演出方法をとる方がいて。一ジャンルに音楽を絞ることによって番組の色とか世界観をちょっとだけランクアップさせるみたいな。そんなこと話したわけじゃないですけど、そういう意味だったのかなって自分が演出するようになってずっと考えていて。いつかそういうのをやりたいなっていうのが心の中にあったんです。
で、澤田プロデューサーだったら受け入れてくれるかなっていうのがあって。
澤田)皆さんがどう思うかわかりませんけど、僕、王道が大好きな人間なんです。ここで泣かせる曲が掛かってほしいな~と思ったらちゃんと掛かってくれるのが好きで。
ちょうどパターンが合いました。
もののけ姫が危険生物ハンターにはまったり、ナウシカが野食ハンターに、ラピュタは白石康次郎さんだったり。
吉村)冒険っぽいなって。
◆澤田さんが吉村さんにストップを掛けたりすることはあるんですか?
吉村)あまり覚えてないけど、あると思いますよ。何かを選ばなきゃいけない時とか結構澤田プロデューサーに聞くようにしていましたし。
澤田)僕も覚えてないですね...
吉村)あとは「ここ僕好きなんで切らないでくれ」とか 笑。そんなことプロデューサーの立場で言われたら俺はもう...っていう笑
澤田)そうですね笑 大好きなんで残してほしいですって。
◆それはとてもいい関係ですね。
吉村)番組への思い入れが強いタイプのプロデューサーですね。
◆プロデューサーはお金の管理がついて回りますが、そのあたりはどうでしたか?
吉村)お金のことはもちろんありましたね。それが密にできたのはすごくよかったと思います。ちゃんとぶっちゃけてくれるっていうか。
澤田)当初一回予算を組み立ててみて、大分厳しいなっていうのはわかっていたのて、極力吉村さんにもそれを見てもらって最終的に人を減らしていくしかないだろうなって。エキスパートの方だったり、いわゆるディレクターデジで成立するような世界観にもっていってもらうとか。収録の現場も狭いハウススタジオで、美術さんにも来てもらう余裕がなくて、ADさんに書道を書いてもらったりして...その相談はすごく乗ってもらえたっていうのがありますね。
吉村)それがよかったのかもしれないです。頭ごなしにお金がないからこうしろって言われるんじゃなくて僕も経験からアイデアを出せたっていうか。ネタ数5人でも大丈夫だよとはずっと伝えてたんですけど、調整してくれて6人になって。多い方がいいという考え方もあるので7とか8とかやりかけたり。
澤田)13人の方がキリがいいんじゃないかという話もありました。
吉村)それやってたら破綻してたかもしれないし、大変ですよね。プロデューサーはそれを伝えなきゃいけないし。
澤田)予算書を、松浦さんや、深野さん、高宮さんに何度もチェックいただき、見積もりの段階で間違っているところがないかどうかを何度もシミュレーションした上で、早い段階から関西テレビさんサイドに追加予算の相談ができていた点も良かったと思います。先輩の方々に「追加予算の相談は正当な主張」と背中を押してもらえたことで、関西テレビ脇田さんとも交渉を進めることができました。本当に心強かったです。
あと、これは社内のことですけど編集部にはすごい助けてもらってるんです。
編集デスクの藤田さん、技術でいうと制作技術部デスクの関満夫さんと...
◆じゃあ会社中が...
吉村)澤田のデビューならと。
澤田)本っ当に心の底からありがたいです。
◆それで賞ですもんね。
吉村)本当に感謝してると思います。
澤田)皆さんで取った賞です。
吉村)賞っていうのは制作がおめでとうって言われるんですけど、今回に関しては本当にワンチームでやったっていう感じですよね。
澤田)本当にそうですね。このインタビューを通して色々な方に感謝を伝えたいです。
関西テレビの脇田さん、吉川さん、ディレクター陣、作家陣、ADの皆さん。出会いを作ってくれたところから、関さんはじめ、ずっと相談に乗り関わってくれた諸先輩方、深野さん、松浦さん、高宮さん、全ての皆さん...
音効の齋藤さん、編集デスク藤田さん、編集エディター藤田君、MA和光さん。編集エディターの藤田君には本当に最後の最後まで、お世話になりました。本当にありがとうございます。必ず第2弾に結び付けて同じチームで戦いたいです。
澤田)あんまりないと思うんですよね、ここまで皆ちゃんと見てくれて。
吉村)そうさせるのが澤田Pの才能かもしれないです。
◆ありがとうございました!