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奮起したからこそ獲得できた二つの賞

創造職人Files

Vol.04

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レベルの差を思い知り
奮起したからこそ獲得できた二つの賞

Vol.04  ディレクター竜崎琢也篇

クリエイターを通して職種にフューチャーする“創造職人Files”。第四回は第2制作部のディレクター 竜崎琢也。【ATP賞テレビグランプリ】奨励新人賞・優秀新人賞を獲得した超エリートかと思いきや、自分はまだまだ、だと更なる高みを目指す。その原動力、番組制作にかける想い、成し遂げたい未来とは。

考えて考えて、考え抜くことを教えられた“チコちゃん”の現場

バラエティ番組におけるディレクターとは演出面の総責任者だと思います。企画を立案し、どんな人を使って、どういうことをしたら面白いかを考え抜くのが仕事でしょうか。

 今、『チコちゃんに叱られる!』(※1)のディレクターをやらせてもらっています。この現場は本当に厳しくて、考えて考えて、考え抜くことを求められます。毎回のテーマもちょっと調べて出てくるようなものではありません。テーマの回答には必ず専門家の方に登場していただきますが、その方たちに迷惑をかけることは絶対にしてはいけません。そして老若男女誰が見ても理解できるようにVTRを作らなければいけない。当たり前に抱く疑問、だけど誰も本当の答えを知らない事に対して、最後は納得していただくことが大前提です。

 “チコちゃん”のチームに入り、それまでディレクターとして培ってきた自分の経験や自信が打ち砕かれました。他のディレクター陣の仕事ぶりを見て「ここまでやるんだ」と今までの自分がいかに甘かったかを思い知らされました。考え抜き、詰めて詰めて、最後の最後まで自分を追い込んで作り上げる。意識レベルの差を思い知らされ、自分はなんてダメなんだろうと本当に落ち込みました。今でもまだまだですが、それでも「面白い」と言ってもらえることが少しずつ増えてきて自信がついてきたように思います。

奨励新人賞・優秀新人賞を獲得も最優秀新人賞じゃないことが悔しい!

“チコちゃん”の現場が辛すぎて「やりたくない」と思ったことが何度もあります。ですが、“チコちゃん”がやりたくなければ新しい番組の企画を自分で考え、その企画を通さなければいけない。それで考え始めた時に頭に浮かんだのが“とんでもない記録、禁断の記録、最下位の記録を紹介する番組”『アンタッチャブル・レコード』(※2)です。

 例えばプロ野球の最多退場記録。この記録を持つのは、巨人やオリックスで活躍したタフィー・ローズ元選手です。彼に取材をして「なぜ退場になるような言動が我慢できないんですか?」等、子どもになったように聞きたいことをそのまま聞きました。ただ状況を紹介するだけではなく、タフィー・ローズ元選手の魅力を視聴者の方にしっかり届けて好きになってもらおうと「無邪気になんでも聞こう!」と臨みました。他にもラーメンデータベースでランキング最下位のラーメン店や、有名アイスチェーン店で10年以上売上最下位のフレーバー等を紹介しました。これらもただ単に「最下位のお店です」なんて紹介してもつまらないし、失礼な話になるだけなので「なぜ最下位なのか」をしっかりと掘り下げることで魅力が視聴者に届き「行ってみたい!食べてみたい!」と感じてくれると思いました。結果、この番組で【第37回ATP賞テレビグランプリ2021】奨励新人賞をいただくことができました。

今年は『さらばだ、人間たち~AIからの挑戦状~』(※3)を制作しました。プロ野球のレジェンドと一流料理人、凄腕ベテラン漁師、とそれぞれ最強のAIを対決させる番組なのですが、人間とAIどちらにも忖度することなくフラットに描けているところを評価していただきました。凄腕ベテラン漁師は宮崎の方なのですが、取材の際に「10年後も20年後も魚が獲れるように、AIと人間がお互いを活かしあい日本や世界の漁業を安定させていきたい」という素晴らしいメッセージをいただきエンディングに流させていただきました。

 この作品では【第39回ATP賞テレビグランプリ2023】の優秀新人賞をいただきました。ただ、賞をいただいたことはとても嬉しいのですが最優秀新人賞でないことが悔やまれます。新人賞は30歳までしか応募できず今年が最後でした。今後、共テレから最優秀新人賞を獲得する逸材が出てきたらいいなと思います。

 僕がこのような賞を受賞できるだけの力を得ることができたのも“チコちゃん”で鍛えられたからです。“チコちゃん”のスタッフは僕が賞を獲っているなんて信じられないかもしれませんが(笑)。

関わるすべての人が心身共に幸せであるように

中学時代、『めちゃ2 イケてるッ!』(※4)が大好きで、夏休みにイベントに行った時に、ちょうどインフォメーションCMの撮影をしていて協力を頼まれ、少しですがテレビに映ったことがありました。当時すごく嬉しかったのですが、その時にスタッフの方の仕事ぶりを見て「こうやって番組を作っているんだな」と、感動し興味を持ちテレビの仕事がしたいと思いました。「自分も楽しんで笑える番組を作りたい」そう思うようになったのです。

 その夢が今、叶っています。だからこそ、もっといい番組を作りたい。アッと驚くようなぶっとんだ企画を立ててみたい。そのためには、“いい仲間といい雰囲気”で番組を作る事が大切だと思っています。立場の弱いアシスタントディレクターや若手も皆がしっかりと自分の考えを発言できる環境作りを行い、きちんと休みが取れる無理のないスケジュールを立てる。いい気持ちで仕事ができなければいい番組はできないですよね。心も体も幸せであることが本当に大切だと思います。番組が終わった後に「このチームで良かった」そう思ってもらえたら嬉しいですね。

 自分なりの正義を持ち、人の気持ちが分かる人が好きです。自分もそうありたいと思っています。たくさんいるディレクターの中で、誰もやったことのない企画を立てられる唯一無二の存在になれるように、視聴者の気持ちにも寄り添える番組作りができるように、一歩一歩、目指す場所に向かって歩んでいきたいと思います。

※1 『チコちゃんに叱られる!』
2018年4月13日(レギュラー放送)〜2023年現在NHK総合で放送中。
 ※2 『アンタッチャブル・レコード』
フジテレビ系で2021年1月5日(火) 24:25~25:25放送。
【第37回ATP賞テレビグランプリ2021】 奨励新人賞受賞。
 ※3 『さらばだ、人間たち~AIからの挑戦状~』
仙台放送開局60周年記念番組【第39回ATP賞テレビグランプリ2023】 優秀新人賞受賞。
 ※4 『めちゃ2 イケてるッ!』
フジテレビ系列で1996年10月19日から2018年3月31日まで放送。バラエティ番組。

竜崎琢也

制作センター 第2制作部
ディレクター

2016年入社。2021年、第37回 ATP賞テレビグランプリで奨励新人賞受賞。
これまでにフジテレビ『有吉のまさかズレてませんよね?』『アンタッチャブル・レコード』、現在はNHK『チコちゃんに叱られる!』などを担当。
(2023年8月取材)