ドラマだらけな現場から
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日々ハプニングが巻き起こる
スポーツ中継は
まさにドラマの宝庫!
現場には常にドラマが溢れている!一分一秒を争う中継、真剣勝負のバラエティ収録、ドラマや映画撮影。そして、ドキュメンタリー。映像現場のリアルを伝える“ドラマだらけな現場から”企画。
第4回は入社以来5年間スポーツ一筋でやってきたスポーツ制作室ディレクターの西村寧々。入社1年目からJリーグJ2の「水戸ホーリーホック」を担当し、チームと共に自身のキャリアも成長させてきた。大学時代ゴルフ部だった経験を基にゴルフ中継や番組も担当。秒刻みでドラマが生まれるスポーツ中継の現場とは。
2023年度最終戦!メモリアルな一戦にはもうひとつのドラマがあった
JリーグJ2「水戸ホーリーホック」(当時22チーム中17位)2023年度の最終戦の相手は格上の「清水エスパルス」(当時2位)。「清水エスパルス」はその日、勝利すればJ1への昇格が叶うという大事な戦いだったため通常よりもハイスペックな技術体制で中継に臨んだ。
前年度監督に成長を見せたいと選手が奮起!
「清水エスパルス」の監督は、つい前年まで「水戸ホーリーホック」の監督を務めていた秋葉さん。つまり、前監督ということもあって、「水戸ホーリーホック」の手の内は知られているという状況…「清水エスパルス」には大変有利な試合運びになると予想されていました。一方「水戸ホーリーホック」の選手たちは秋葉監督に自分たちの成長した姿を見せたいという思いで、ものすごく気合が入っていました。会場の熱気は最高潮!私も中継をしながら会場の空気を感じて、いつも以上にドキドキしていました。激闘の末、結果は引き分け!想定していた結果と異なる展開となったこの試合は中継の醍醐味を感じる一戦となりました。
驚きのハーフタイムショーで現場はてんてこ舞い!?
サッカーの試合では前半戦と後半戦のハーフタイムにパフォーマンス・ショーをして観客を楽しませることがある。ある日のショーで中継に支障が起きかねない状況を事前に回避した。
コートの周りを巨大な○○○が周回!
ハーフタイムショーが行われる試合では、事前にショーがどんな内容なのかチームの広報の方に確認をしておきます。その日資料には、小さく「周回イベント」と書かれていたので「何かがトラックを走るんだな」くらいに思っていました。そして当日現場に入ってみるとショーのリハーサルを行っていて、オフロード車が5~6台走りながら観客席に小型のバズーカのようなものでプレゼントを打ち込んでいたんです。それが中継に必要なケーブルを引く場所だったので「これはまずい!」と。踏まれたら断線してしまう可能性がありますから。それで急遽広報の方と打合せて、「前半が終了したらカメラにケーブルを繋げたまますぐさま回収するのでそれが終わるまで絶対に車を走らせないでください」とお願いをしました。さらにレースは1周では終わらないというので最低限の周回にしていただき、それ以上は走らせないでくださいと約束をしました。前半戦が終わったら猛ダッシュでカメラとケーブルを回収してハーフタイムショーのレースを見守り、終わったらダッシュで再度カメラとケーブルを配置して、なんとか後半戦を無事にスタートすることができました。本当にあの時はドキドキでした。
監督インタビューであわやの…!
試合後の選手や監督へのインタビューセッティングもディレクターの役割。あるサッカーの試合では風が強かったので急遽インタビューの場所を変更することに。しかしその場所が○○の導線だったことから現場は一触即発の危機に…!!
事情を説明するも板挟みに!
インタビューは必ず両チームの広報担当者と段取りの打合せをします。監督や選手がいらっしゃった時にお待たせする事は絶対にNGですからタイミングはとても大切です。その日は強風で急遽インタビュー場所を変更したのですが、そうしたらそこは審判が通る導線のど真ん中だったのです。そしてその日に限って試合終了後、審判がグラウンドからなかなか戻ってこない…と、ヒヤヒヤしていたら、案の定、インタビューを受ける相手チームの監督が審判よりも先に来てしまいました。仕方がないのでホームの広報の方に「先方の監督がいらしたのでインタビューをスタートしていいですか?」とお伺いを立てたら「審判が戻ってからという約束でしょう!」と言われイチかバチか相手チームの広報の方に「すみません、監督に待ってもら…」と始めたら言い終わらないうちに「は!?」と言われてしまって。それで再度ホームの広報の方に事情を説明したところ、了承してもらえ、なんとか助かりました。
サッカーは熱いサポーターに支えられている!
なかなか勝利を得られない時、熱いサポーター達は選手や監督を叱咤激励する。それはチームとサポーターに強い絆があればこそなのだ。
クラブはサポーターの抗議を真摯に聞く
「水戸ホーリーホック」の担当になった最初のシーズンは、サッカーというスポーツのこともどんなファン層なのかもわからない状況で日々勉強させてもらっていました。そんな中で驚いたのは、「水戸ホーリーホック」が連敗するとサポーターが試合終了後に帰らずに抗議を始めたこと。抗議を始めるとそこに選手や監督や広報の方も出て来てその話を聞きます。そして選手たちはサポーターに「自分たち頑張るんで!」などと会話をするのです。サッカーにおける選手とサポーターの関係性を知り感動しました。
競技によってファンの雰囲気も千差万別!
西村はサッカー以外にもゴルフやラグビー等のスポーツ中継を担当している。競技によってファンの雰囲気はまったく異なるという。
ラグビーファンは○○○、女子ゴルフファンは○○
面白いなーと思うのが、観客の皆さんの雰囲気がスポーツによって全然違うことです。例えばラグビーファンはとても穏やか。サッカーはけっこうヤジがあったりするんですけどラグビーは全くありません。試合終了後にファンが選手のところに行って色紙やグッズを出して「サインして!」って気軽に頼んだりもします。ファンとの距離はとても近いと思います。
女子ゴルフは比較的年配の男性にものすごく人気があって、大勢観戦にいらっしゃいます。常連の方たちも多くて、クライマックスの18番ホールに朝イチでいらっしゃって場所取りしてスタンバっていたりもします。たくさんの観客の方がいらっしゃいますが、皆さんとても真摯でトラブルなども一切ないです。
ラグビーの試合でまさかの…!?
ラグビーのハーフタイムは“12分以内”と決められている。つまり、その時間内であればいつでも後半戦をスタートしていいということである。試合だけで考えるとそれでいいかもしれないが、中継が入っている場合ハーフタイム中はCMが流れることが多いので早めに試合を始められてしまっては視聴者が後半戦を途中から観ることになってしまう。そこでラグビー協会や審判には必ず12分経ってから始めて欲しいとお願いしている…が…!
まだCM中なのでー!
ハーフタイムで5分くらい経って選手が出てきて試合の準備が整うと、試合がスタートしてしまいます。中継をしている場合、それでは困るので“必ず12分経ってから後半戦をスタートさせてください”と審判にお願いしているのですが、慣れていない審判だと協会の人が合図を出したら試合を始めてしまいます。それを「ちょっと待ったー!」と止めてスタート時間を相談します。グラウンドにいるディレクターをピッチディレクターと言うのですが、ピッチディレクターの役割はそんな審判とのやり取りがメインといっても過言ではありません。特に地方での試合では多いです。
ゴルフの中継中、すべての音声が途切れた…!
ゴルフコースで解説をする解説者の荷物を持ったり、その場でディレクターの指示を受けて状況を解説してもらう合図を送ったりする役目をフロアディレクターという。西村がフロアディレクターをしていた時に起こった、とんでもハプニングとは。
最終的には丸く収まり(?)一安心
フロアディレクターはインカムでディレクターからの指示を聞きながら解説者の方に合図を送って進めるのですが、ある試合の時に初日からインカムが聞こえないという事件が起きました。仕方がないのでディレクターからの指示は携帯電話で受けながら進めていました。そして最終日を迎えた時、今度は放送の音声が途切れるという大ハプニングが起こります。優勝が決まるウイニングパッドの瞬間の音声も聞こえてなかったんです。さらに優勝者インタビューのマイクもダメになってしまって…もう現場は大混乱です。「インタビューはどうする!?」ってディレクターとプロデューサーがやり合っている。私はフロアディレクターをしていたので、大混乱のインタビュー現場には少し遅れて到着しました。私は冷静に「どうしますか?選手の準備はできていますよ! 」とディレクターに進言。最終的にマイクが直って無事にインタビューを放送することができました。
目指すはゴルフのメインディレクター!
ゴルフでは各ホールを担当するディレクターが5人くらいいます。1ホールにつき1台の中継車にディレクター1人とスイッチャーが乗り込み、自身が担当するホールの画を決めていきます。そしてそれらの画を大量のモニターが設置された仮設小屋のようなところにいるメインディレクターが確認し瞬時に放送にのせる映像を決めます。さらにオンエアで放送されていない映像を収録している人たちが4人くらいいて、視聴者に見せるべき映像が同時に発生した時には、最優先映像を生中継した後に収録されたものを放送します。その繰り返しがゴルフ中継の間ずっと行われています。のんびり見えるゴルフ中継ですが、実はものすごいスピードでたくさんの人が情報を処理しているのです。そしてそのトップにいるのがメインディレクター。そのポストに就けるように日々経験を積み、10年以内になってみせます!
西村寧々
技術センター 制作技術部 スポーツ制作室
2020年入社。サッカー、ラグビー中継を中心に、様々なスポーツ中継に携わる。2023年から本格的にディレクターをはじめ、中継だけではなく、ゴルフ番組のディレクターも担当。
(2024年6月取材)