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みんなの力を引き出して最高の作品に!

創造職人Files

Vol.11

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現場の全員を信じて、誠実に向き合う。
みんなの力を引き出して最高の作品に!

Vol.12  監督 木村真人篇

クリエイターを通して職種にフューチャーする“創造職人Files”。第十二回は第1制作部の監督、木村真人。「青春、恋愛を描く物語を一生作っていたい」と朗らかに笑う木村が考える、監督業の醍醐味、仕事におけるポリシーとは。

総合的に作品に携われることこそ、監督業の一番の魅力

ドラマの助監督として10年ほど下積みをして、メインで監督を任されるようになったのは4〜5年前から。監督は、出演者を決めるキャスティングやスタッフの座組、台本作り、撮影現場の進行、演出、編集等、作品の最初から最後まで総括して仕切るポジションです。企画の立ち上げから関わる場合と、企画が立ち上がったあとで監督としてアサインされる場合と両方ありますが、作品の舵取りを行う責任ある役職。総合的に作品に携わり、イメージを具現化して映像に落とし込むことこそ、僕が思う監督業の一番の魅力です。すごくやりがいがありますし、作品が視聴者の皆さんに届いて「面白かった」と言ってもらえたときの嬉しさも何ものにも代え難い醍醐味だと思います。

子どもの頃、夕方家に帰ると母や姉がいつもドラマの再放送を見ていて、自分も毎日のドラマを楽しみにしていたことをよく覚えています。大学進学の時も『オレンジデイズ』(※1)というドラマを見て、“こんな大学生活を送りたい!”と影響を存分に受けていました。想像していたドラマのような大学生活は送れなかったけれど、メディア学科のある大学に入ったので“ドラマを作る側をやってみよう”という若干ミーハーな気持ちで自主制作ドラマを撮り始めました。これがすごく楽しくて!気づいたら学生映画祭に出すほど好きになっていました。本格的に監督になりたいと思い始めたのは、この経験からです。

目指すのは、「また一緒に仕事をしましょう」と嘘なく言える関係

監督としていつも大事にしているのは、誠実でいることと、みんなの100%、120%、150%の力を引き出すこと。例えばキャストにお芝居のアイディアを伝えるとき、「こう動いてください」ではなく「こう動いたほうが見てくれる人に絶対伝わると思う」と気持ちを共有します。たくさんのアイディアが生まれて決断に迷ったときは、頭の中で結論を出す前に全てを試してみます。関わる全員のことを信頼しているので、監督だからといって独りよがりにはならない。その結果、「いいものが作れて楽しかった。また一緒に仕事をしましょうね」と嘘なく言えるような関係、現場を作りたいと思っています。それが100%以上の力を出すことにつながるし、シンプルだけどいい作品にするための一番の近道だと信じています。

もうすぐ公開される映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(※2)の現場でも、メインキャストの4人といつも近くにいて、みんなが思ったことや、やりたいと思ったことを遠慮なく言えるように意識していました。「監督ではなくて名前で呼んでほしい」とお願いして、距離を感じさせないようにしたりして。主演の八木勇征さんは、本当にいろいろなアイディアを出してくれました。すごく感情表現のレンジが広いし、感じたことを具現化する瞬発力がとても高い。4人だけで話し合うシーンは特にキャスト同士の掛け合いの楽しさが大事な場面だったので、「次はこんなことやってみよう」「これ食べてみる?」みたいな感じで、フランクに意見を交わしながら創り上げました。お互いに変に気を遣わず積極的にアイディアを出し合えたから、4人のナチュラルな空気感が反映されたいいシーンになったと思います。映画監督は初めてでしたが、全ての時間がずーっと楽しかった。いい現場でした。

「でも」を封印した日、コミュニケーションが変わった

僕、子どもの頃から「感情が見えない」とずっと言われていて。「楽しいのかつまらないのかわからない」とか、「本当にありがとうって思ってる?」とか。言葉数も少ないし、表情に出ないし、笑顔を作るのもすごく苦手だったんです。

そんな僕ですが、大学時代のアルバイト先では生意気に意見だけはしっかり言っていたわけですよ(笑)。あるとき、バイト先の店長がバックヤードで「あいつはすぐに『でも』って言うから嫌なんだよ」って話しているのを聞いてしまって。本当にショックでしたが、確かに自分の意見に対して速攻で「いや、でも……」って言われたら嫌な気持ちになりますよね。そのとき、「これから生きていく上で、もう『でも』って絶対言わないようにしよう」と心に誓いました。染み付いていた言動のクセを矯正するのは簡単じゃなかったけど、人は切羽詰まると変われるものです(笑)。その経験があるから、より一層、撮影現場でも人が話しやすい環境にしたいと思うんでしょうね。たくさん言葉を尽くしてコミュニケーションを取らないと自分のやりたいことや、してほしいことは伝わらない。とはいえ、相手が気持ちよく受け取れるような言葉じゃないと、伝わるものも伝わらないと思っています。

“今世紀史上最大のラブストーリー”を撮って死ぬ!

『オレンジデイズ』は僕に映像業界を志すきっかけをくれた作品ですが、監督になった今、自分が創りたいもの、目指している憧れの作品も『オレンジデイズ』のような淡くて蒼くて、かつ深みのある青春物語やラブストーリーなんです。一生、ラブストーリーと青春ものだけを撮って生きていきたいくらい(笑)。恋愛や青春の一度しかない蒼い瞬間を切り取った作品は、人間らしい気持ちの機微や、そこに流れる風みたいなものをより感じられるから大好きです。

今は、地上波、映画館、サブスク配信、スマホ特化の縦型ショートドラマ等、作品を届けられる手段が多岐にわたります。これからますます媒体が増えていくであろうことを思うと、本当に面白いもの、興味を引く作品を生み出さなければ、どんどん視聴者に見てもらえなくなっていくだろうなと感じます。テレビだから見てもらえるという時代ではなく、作品ごとに内容を突き詰めることが必要不可欠。木村真人が監督をしたら“こういう座組ができて、こういう作品ができあがる=それが欲しいんだ!”と言ってもらえる人になりたいですね。そしていつか、いつまでも世の中に残るような“今世紀史上最大のラブストーリー”を撮って死ぬ! それが今の野望です。

※1 『オレンジデイズ』
2004年TBSテレビ系の「日曜劇場」枠で放送されていた日本のテレビドラマ。主演は妻夫木聡と柴咲コウ。大学4年生・結城櫂(妻夫木聡)と、病気で4年前に聴覚を失ったことにより心の扉を閉じてしまった女の子・萩尾沙絵(柴咲コウ)のラブストーリーを軸に展開される、大学の卒業を1年後に控えた5人の青春ドラマ。

※2 『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
“18歳になると人生で一度だけ魔法が使える”という秘密がある村に住む、高校生4人の青春物語。最初は魔法を信じていなかった彼らも、父親たちがかつて魔法を使ったことを知り、その使い道を真剣に考え始める。4人はそれぞれの未来に向けて、魔法をどう使うのか? その選択が、彼らの人生を大きく変えていく。

公開日:2025年2月21日(金)
配給:ポニーキャニオン
原作・脚本:鈴木おさむ
監督:木村真人
出演者:八木勇征 井上祐貴 櫻井海音 椿 泰我(IMP.)

木村真人

制作センター 第1制作部 監督

株式会社ベイシスより共テレに2020年中途入社。GP帯の連続ドラマから配信作品、MVと多岐にわたり監督を務める。主な作品はドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~2020』(20)、『知ってるワイフ』(21)、『推しの王子様』(21)、『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』(22)、『純愛ディソナンス』(22)、『ウソ婚』(23)、『院内警察』(24)、『アオハライドSeason1・2』(23/24)など。縦型作品としても、“au×アスミック・エース”の縦型ショートドラマプロジェクト「STUDIO sauce」第1弾『てのひらラブストーリー 〜婚活五重奏〜』をディレクション。また、映像制作団体INDIEZの全ての作品の監督・プロデュースを務めていて、2019年に【CAMPFIRE CROWDFUNDING AWARDエンターテインメント賞】を受賞。

(2025年1月取材)