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音声に必要なのは耳の良さではなく察知力

創造職人Files

Vol.09

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先回りして状況を瞬時に判断。
音声に必要なのは耳の良さではなく察知力

Vol.09  制作スタッフ 河田菜央佳篇

クリエイターを通して職種にフューチャーする“創造職人Files”。第九回は制作技術部で音声を担当する河田菜央佳。音楽が好きで、音に関わる仕事がしたいと音声の道へ。ミキサーとしても頭角を現してきた河田は「仕事が楽しくてたまらない!」と話す。河田が感じる“音声”という仕事の魅力とは。

敏感に気配を察知し、先回りして調整をかける

フロア担当として演者さんにピンマイクを付けたり、スタジオでマイクを設置したり、ガンマイクを持ったりする仕事と、ミックスアシスタントを経てミキサーというミックスの仕事もしています。ミックスとは演者さんが発する声のバランスを整える仕事です。演者さんには一人ひとりワイヤレスピンマイクが付いていて、そのワイヤレスピンマイク一つひとつ毎にミキサーが専用の機材でそれぞれ音や質を調整できるようになっています。人の声の質は様々です。大きくて通る声の人もいれば、こもっていて聞き取りづらい人もいる。それぞれの声が均等に、視聴者の方に違和感なく届くようにスタジオのマイクで集音された音をミキサーが調整します。

現在、『ひらけ!パンドラの箱 アンタッチャブるTV』(フジテレビ系)(※1)のミックスをしているのですが、バラエティ番組では突然、芸人さんが大きな声を出したりします。そんな時にミキサーは事前にその雰囲気を察してその人の声が放映された時に大きくなりすぎないように調整する。もちろん収録前に台本を確認して流れを把握し事前に全体の音の調整は行っておきます。その上で、収録の状況を見ながら、「今この人の声を拾った方がいい」とか「ここで大きい声がでそうだから押さえておこう」等、瞬時に察知して調整を行います。音は映像よりも早く届きます。カメラが向く前に声を発するかもしれない。その時の声を逃さないように、すぐに気配を察知できるように、収録中はあらゆるところにアンテナを張っています。

スタジオで聞こえる“音”がそのまま放映されるわけじゃない

幼い頃からピアノを習い中高は吹奏楽部でした。人生の中で音楽と過ごしてきた時間が一番長かったこともあり、“音”に関わる仕事がしたいと考え映像技術が学べる大学に進学。カメラや照明、音声と一通り学んだ結果、やっぱり突き詰めたいのは“音”だと思い、音声の道を選びました。やればやるほど音声の仕事は本当に奥が深いと思います。
番組の雰囲気や流れに合った音を作るために、数百種類はあるマイクの中から、ふさわしいマイクを選び設置するのはフロア音声の仕事です。マイクの種類や設置する場所や向きによっても集まる音は異なります。チーフフロアは事前にディレクターと打合せをして、どんな音が欲しいのか確認しそれを再現できるように考えます。さらに台本を読んでこちらから「画に奥行きを持たせたいなら、この種類のマイクをここに設置しませんか」等と提案することもします。どんな風にしたらより良い音になるのか、より良い番組になるのか、常に考えています。
音楽番組ではすべての楽器にマイクを付けます。それをどんなマイクでどの場所に設置するか、そしてどんなミックスを行うかで視聴者に届く音は異なります。スタジオで聞こえている音がそのままテレビから流れるわけではありません。画と音の相乗効果で番組がより魅力的になるように音声は全力を尽くします。

音声の仕事が大好き!もっともっと極めたい

音が好きだったり、興味がなかったりしたら続かない仕事だと思います。目に見えない部分を大切に、それは例えば現場の空気感だったり、温度だったり、演者の気配だったり……それを敏感に察しながら音声は集音しミックスします。意外かもしれませんが、耳が悪い音声は多いです(笑)。それは常にイヤホン等をつけて大きい音を聞いているからかもしれませんが、音声が必ずしも耳が良くなければいけないわけではありません。大切なのは、察する力があるか、音が好きかどうか、ではないでしょうか。
入社して3年目の時、『FNSラフ&ミュージック2022 〜歌と笑いの祭典〜』(フジテレビ系)(※2)のフロア音声を担当しました。2日間に渡る大型特番のチーフフロアの補佐として演者の皆さんのワイヤレスピンマイクの管理を計約9時間にわたり行いました。生放送中は誰がどのタイミングで登場するか分からない状態だったので緊張の連続でした。ですが、すべて終えた後の達成感と喜びはものすごかったです。
私は本当に“音声”という仕事が大好きです。フロアの仕事もミックスも両方好き。今はもっともっと様々な現場を経験し、音声という職業を極めていきたいと思っています。

※1 『ひらけ!パンドラの箱 アンタッチャブるTV』(フジテレビ系)。2023年4月11日~毎週火曜日21:00~21:54放送。MCは柴田英嗣・山崎弘也(アンタッチャブル)。
※2 『FNSラフ&ミュージック2022 〜歌と笑いの祭典〜』(フジテレビ系)。2022年9月10日(土)、11日(日)の2夜連続、歌と笑いの融合をテーマにおよそ9時間にわたり生放送された。

河田菜央佳

制作技術部
音声・ミキサー

2020年入社。『アンタッチャブるTV』で初チーフ ミキサー担当。主な担当番組は『ミュージックフェア』『FNS歌謡祭』や情報・報道番組『ノンストップ』『ぽかぽか』『プライムニュース』バラエティ番組『VS魂』『DOCUMENTAL』『逃走中』等サッカー、ラグビースポーツ中継等多岐に渡る。

(2024年2月取材)