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今日も編集技術の現場を支える

創造職人Files

Vol.10

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裏方の役職に高い誇りを持ち
今日も編集技術の現場を支える

Vol.10  テクニカルコーディネーター 藤田孝政 篇

クリエイターを通して職種にフューチャーする“創造職人Files”。第十回は制作技術部編集セクションでテクニカルコーディネーターを務める藤田孝政。聞きなれない職種ながら、大規模な編集システムを運用する現場になくてはならない縁の下の力持ち。幅広い業務を手掛けるテクニカルコーディネーターの仕事とは。

多岐に渡る業務は大きく三つに分類される

人と人、人と機材を繋ぐテクニカルコーディネーターの仕事は大きく三つに分類されます。一つ目は編集案件の受注と編集室のスケジュール管理、二つ目は編集機材の保守管理、三つ目は編集セクションの設備投資計画です。約5:3:2の割合で日々業務にあたっています。
共テレでは築地と台場に編集セクションの拠点があり、25部屋以上の編集室で日々編集作業を行っています。制作スタッフから「何月何日に、こんな番組の編集をしたい」等の依頼を受け、編集室のスケジュール状況を確認し受けられるか受けられないかをジャッジし、受けられるようであればエディター・ミキサーのシフターと、どういうスタッフ体制で臨むかを相談します。共テレの編集室がいっぱいの時には社外の編集室を探すこともあります。時期によりますが1人で5~15番組ほどを同時進行で調整し、プロデューサーとの編集作業費のやり取りも仕事の一つです。「編集作業の予定日に入れなくなってしまった」と制作スタッフから突然連絡があったり、予定通りに編集が終わらず押してしまったり、日々様々なことが起こります。何もない日というのはないかもしれません(笑)。なるべく編集作業がスムーズに行われるように事前に起こり得る状況を考えながら調整します。スケジュールがパンッとはまった時には気持ちがいいですね。

編集室は24時間365日稼働しています。ここが機材トラブル等によって止まってしまっては大変なことになります。そこで機材の保守管理が重要です。「編集ソフトウェアのライセンス認証が外れた」「機器が上手く動かない」「PCの動作が重い」といった軽微なものから、「落ちてはいけないファイルサーバーが落ちている」等、致命的なトラブルが発生することもあります。その都度状況を確認し対応するのですが、基本的なPCスキルはもちろん、編集システムの技術的知識やケーブルで繋がっている編集室とマシンルームの間の信号の流れも理解しておく必要があります。時にはケーブルが通っている床下を開けて信号の系統図を確認しながらトラブルの原因を探ります。
自分たちで直せない機器の故障はメーカーに修理を依頼します。見積もりをもらい、社内承認を得て発注し、修理から戻ってきた機器の動作確認を行います。問題なければ支払い処理を進めるといった事務作業もテクニカルコーディネーターの仕事です。編集作業がストップしないことを最優先に考え、これらの対応にあたります。

最後に設備投資ですが、これはテクニカルコーディネーターとして働いている中で一番やりがいを感じる業務かもしれません。機材は年月と共に必ず劣化していきますので、新しいものに買い替える計画を立てます。皆さんがiPhoneを買い替えるタイミングで悩むように、新しい機材をどのタイミングで導入するのがベストなのか考えます。予算によってiPhoneの機種選定をするように、決められた予算の中で最適な機材構成を検討します。機材を入れ替えるだけではなく、時には壁紙や照明等、部屋の内装も含めて大規模にリニューアルすることもあります。これらは全て先行投資です。会社のお金を使って設備投資をするには会社が長期的に利益を得る計画を立て、それを実行することが求められます。そのためテクニカルコーディネーターは技術的知識と共に、営業的戦略力も不可欠です。

一歩一歩進んで辿り着いたテクニカルコーディネーター

海外の大学を卒業し帰国した後、仲の良かった友人がテレビ関係の仕事に就いていることを知り、なんとなく興味がわき軽い気持ちで共テレのグループ会社で働き始めたのがこの業界に入ったきっかけです。初めはスポーツやイベント等、リアルタイムで送られてくる映像を収録する技術の中でも特に裏方の仕事を行っていました。
そのうち自分が出来ることが徐々に増えていき、機材の保守や管理も行うようになっていきました。そんな時、会社内で人の動きが活発になるタイミングだったこともあり、テクニカルコーディネーターとして勤務する声が私にかかりました。長年目をかけてもらっていた上司から誘っていただいた経緯もあり、自分も新しいことにチャレンジしたい気持ちがあったので断る理由はありませんでした。いま思い返してもあの時が自分の方向性を決めた瞬間だったのは間違いありません。テクニカルコーディネーターの道を極めようと決めたのもこの時です。自分は周りの人にも運にも恵まれていたと感謝しています。
この役職はどの会社にも存在するものではなく、現場の編集スタッフが兼任することで成立はします。あえてそこに私のような役職を立てるということは共同テレビとしての想いがあります。日進月歩で進化する技術を用いて多種多様なコンテンツ制作を遂行するためには、最前線の編集現場から一歩引いた視点から見えてくることが大切だったりもします。時には情熱をもって、時には冷静に、スムーズに編集作業が進むように陰から支えるのがテクニカルコーディネーターだと思います。

高い誇りを胸に日々精進し続ける

編集スタッフと制作スタッフの板挟みになることはしょっちゅうで「孤独な仕事ですね」なんて言われたりもします(笑)。それも役割だと受け止めています。編集技術の「何でも屋さん」として幅広い業務をこなし、時には撮影現場まで足を運んで多くの人と関わりをもちます。人と人、人と機材を繋ぐ立場として「藤田に任せればなんとかしてくれる」そう言われるテクニカルコーディネーターを目指して日々精進し続けます。

藤田孝政

制作技術部 編集セクション
テクニカルコーディネーター

2017年中途入社。技術スタッフとしてお試しの気持ちで働き始めた番組制作の現場が性に合い、徐々にこの業界にのめり込む。巡り合わせもあって編集セクションの中でテクニカルコーディネーターとして勤務。日々編集スケジュールを調整しながら、築地・台場の編集室の管理を担当する。

(2024年2月取材)