ドラマだらけな現場から
Special contents
Kyotele search
24時間、二人体制!
“相棒”と駆け抜けた
ミラノ・コルティナ
現場には常にドラマが溢れている! 一分一秒を争う中継、真剣勝負のバラエティ収録、ドラマや映画撮影。そして、ドキュメンタリー。映像現場のリアルを伝える“ドラマだらけな現場から”。
第7回は、『ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック』の取材に参加したカメラマンの谷川博亮と村山 元。初めての大舞台で感じたプレッシャー、心に残った日本人選手の姿、そしてリヴィーニョでの24時間共同生活まで。“相棒”のような関係性の二人だからこそ楽しく乗り越えられた、刺激的なオリンピックの舞台裏を語ってもらいました。
「一人で戦う」と思っていたら… 現地で待っていた“二人体制
2026年2月、イタリアの都市・ミラノとコルティナ・ダンペッツォを中心に5箇所の会場で開催された『ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック』。初めてのオリンピック撮影に向け、一人はミラノ、一人はリヴィーニョでそれぞれの現場で撮影に邁進する覚悟を決めていた二人。しかし現地で待っていたのは、想定とは少し違う“二人体制”での撮影だった。
二人三脚で挑む安心感
谷川) 別々の会場でそれぞれ撮影する予定だったのですが、分散する会場の移動に4時間もかかるため、二人で一緒にリヴィーニョに絞って撮影することになったんです。それぞれ一人で現場を回す覚悟を決めて準備を進めていましたが、これは想定外。お互いを気遣いながら撮影ができたので、先輩に聞いていたよりはずっとやりやすい環境だったと思います。
村山) 大舞台へのプレッシャーはありましたが、精神的にも、体力的にも助けられました。普段あまり使うことがなかったタイプのロケ用のカメラを使うこともハードルの一つだったので、先輩の谷川さんがいることですごく安心して撮影に臨めました。
ファインダー越しに見た、オリンピックの熱狂
オリンピックの舞台だからこそ出会えた景色もある。日本人選手の歓喜や悔しさを間近で見届け、カメラマンとしてその瞬間を記録する──。テレビでは伝わらない熱気を、二人は肌で感じていた。
「国歌ってかっこいいんだな」
村山) 日本人選手がメダルを獲得した瞬間を目の前で見られたことは、すごく感動的でした。特にモーグルの堀島行真選手! 金メダルを目指して4年間頑張ってきた思いを聞いていたので、その場で撮影できたことがすごくうれしかったです。テレビで見ていた世界に、自分がカメラマンとして立っているんだなという実感がありました。
谷川) 日本が獲得した5つの金メダルのうち、4つはリヴィーニョ。だから僕は、国歌を聴けたことも印象的です。金メダルを獲った選手の表彰式でしか流れないので、リヴィーニョで何度もその場に立ち会えたのは特別でした。それまでは意識したことがなかったんですが、「日本の国歌ってこんなにかっこいいんだ」って(笑)。選手の努力や喜びを見たあとには、いつもと全然違って聴こえるんですよね。
注目を集めた平野歩夢選手のインタビュー。その目の前で…
ケガを抱えての出場ということもあり、大きな注目を集めていたスノーボードの平野選手。競技後のミックスゾーンでは、各局が一瞬の表情を逃すまいとカメラを構えていた。その緊張感の中で谷川さんが立ち会ったのは、平野選手とスノーボード界のレジェンド、ショーン・ホワイト選手が交わした一瞬のやり取り。
一番近くで撮れた“決定的瞬間”
谷川) 予選でショーン・ホワイト選手が偶然近くにいたため、リアクションを撮っていたんですが、平野選手が来た瞬間に振り返ってハグして、声を掛ける場面があって。そのまま平野選手が僕たちのインタビューに来てくれたので、僕たちは一番近い場所でその瞬間を撮ることができました。しかも、「今、ショーン・ホワイト選手と話していましたけど」という流れで、その直後の気持ちまで聞くことができて。注目度の高いインタビューでこんなに抜群のタイミングに立ち会えたので、「これは、いい画が撮れた!」と嬉しくなりましたね。
ピザか、パスタか。日々の悩みは、小麦づくしの食生活!?
競技だけが、オリンピックの仕事ではない。開幕前から現地入りし、街の様子や会場の雰囲気などもカメラに収めていた二人は、約1カ月にわたってイタリアに滞在。その間、毎日のように付き合うことになったのが、“イタリアらしい”食生活だった。
納豆が700円!?!?
谷川) 本当に小麦にまみれた1カ月でした(笑)。レストランへ行っても、基本的にはピザかパスタ。店を変えるか、具材を変えるかくらいしか選択肢がなかったですね。夜中まで中継がある日は、滞在していたコテージへ戻ってから二人でパスタをゆでて、日本から持ってきたレトルトソースをかけて食べていました。たらこにしたり、カレーにしたり。結局パスタなんですけど(笑)。
村山) 最初はいろいろなお店へ行っていたんですが、途中から「今日はあそこに行こう」って、自然と行く店が決まっていましたね。あと、ミラノのスーパーで買った納豆が3パック700円くらいしたのが衝撃的だったんですが、納豆ご飯を食べたときの感動も忘れられません。普通の納豆ご飯が、こんなにおいしかったんだ!って(笑)。
オリンピックならではの交流を初体験
世界中からスタッフが集まるオリンピックには、現場ならではの文化もある。その一つが、各国の放送局や大会関係者が持つ“ピンバッジ”の交換。
ルフィは世界でも大人気!
谷川) フジテレビのピンバッジは、アニメを放送している『ワンピース』のルフィがモチーフだったので大人気でした。街には、ピンバッジを山ほど抱えて歩いている“ピンバッジおじさん”みたいな人もいて(笑)。僕らには一人15個配られていたので、韓国の選手から「そのバッジありますか?」と声を掛けられて交換したこともありましたね。ただ、途中から「高額で転売されているらしい」という怪しい話も聞こえてきて……(笑)。それからは、本当に関係者だと分かる人とだけ交換するようにしていました。
村山) ルフィは本当に人気でした。ルフィ1個と、他のバッジ10個くらいを交換している人も見かけましたし、「ルフィのレート、上がってる!」ってびっくり(笑)。オリンピックならではの文化で面白かったですね。
“自分で考えて撮る”面白さを、これからも
入社時から噂に聞いていた、オリンピックの大仕事。ロケの部署にいて、なおかつタイミングが合えば行けるという貴重な仕事の一つだと思っているので、今回経験できてすごくよかったなと思っています。
それに、最低限のカメラ台数で全部自分たちで撮り切るというロケのスタイルがやっぱり面白いなということも改めて感じて。最近は後輩たちの動きも含めて現場全体を見るような統括的な立場になってきていますが、「この画が必要だから撮っておこう」とか、「この映像があったらいいよな」と考えながら自分で組み立てて撮っていく仕事は、これからも続けていきたいですね。
機会があれば、次もこの二人で!
オリンピックって、やっぱり特別な現場なんだなと改めて感じました。刺激的な現場で、感動を肌で感じて。テレビとはまったく違う景色を見ることができました。
もちろん大変なこともありましたけど、それ以上に「また行きたい」という気持ちのほうが大きいです。約1カ月間の滞在のうち、2週間以上、24時間一緒にいても谷川さんとは一度もぶつからず、助けてもらいました。だから、もし次にオリンピックへ行ける機会があるなら、またこの二人で行けたら心強いですね。その頃には、今回より少しでも成長した姿を見せられるように、これからも一つひとつ経験を積み重ねていきたいと思っています。
谷川博亮
技術センター 制作技術部 コンテンツ技術G CAM
2016年入社。取材カメラマンとして情報、バラエティの外ロケをメインに担当し、海外出張も10カ国ほど経験。ドローン撮影も担う。近年の主な担当番組は、『きょうのわんこ』『リアリティーショー』等多数。
村山 元
技術センター 制作技術部 コンテンツ技術G CAM
2020年入社。ロケの現場や配信業務をメインとしながら、バラエティなどのスタジオ業務やスポーツ中継のカメラも担当。
(2026年6月取材)