澤田は今、俺がプロデューサーとして参加している『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル(amazon)』に、同じくプロデューサーとして入っているよね。

深野
とはいえ、『ドキュメンタル』に関して言うと、僕は収録の前後にしか携わっていないんですよね。いわば“当日のアテンドをしているプロデューサーの一人”という感じでしょうか。

澤田
いや、すごく重要なポジションだよ。『ドキュメンタル』では、収録前に“出演者同士を絶対に会わせない”ということが大前提。だから廊下で出演者が鉢合わせしないように、インカムを持ったディレクターが「誰々さんがトイレに行きたがっています」とか「誰々さんがタバコを吸いたがっています」といったリクエストを集めている。で、それを聞いて「今は楽屋から出ないでください」とか「今、喫煙所に行ってください」といった指示を出しているのが澤田だよね。

深野
前任の方がいたのでそれに倣ってやっているものの、やはりすごく緊張しますね。特に『ドキュメンタル』は、独特の緊張感があるように思います。

澤田
それは俺も同感。収録が始まったら、何があっても基本的にVTRは止まらない中での数時間、とにかく相手が笑うまで笑わせ続けるという状況。もちろん、いつ誰が笑うか見てなければいけないから、空気の張り詰め方が他の番組とはだいぶ違うよね。

深野
そうですね。スタッフ側も「ミスっちゃ駄目だ」という、いい意味での緊張感の中でやれている番組だと思います。出演者の皆さんは当然緊張されていますし。

澤田
あの1,000万円という賞金はリアルに渡されるお金なので、死にもの狂いで相手を笑わそうとする凄みも感じるよね。本当にリアルな笑いが繰り広げられていて、その現場を間近で見ていられるのはすごく幸せを感じる。

深野
そこに至るまでの準備には大変なこともあるんじゃないですか?

澤田
これはどの番組でも同じだけど、プロデューサーやディレクターは、演出家の意図を実現すべく努力をする訳だよね。そこには様々な制限があることが多いので、上手くバランスを取りながら交渉や調整を重ねて、面白さが削られないようにしてくことが使命だと考えている。『ドキュメンタル』のシーズン11のように、本来人を笑わせることを生業にしている芸人の方でなく、俳優やミュージシャン、アスリートといった様々なジャンルの方々が出演される場合は、個々の出演者ごとにできることできないことを調整しつつ、その中でも最大限面白いことを実現することが必要なので、かなりタフな仕事だったかもしれないね。

深野
そうですよね。出演者の方々はもちろん、『ドキュメンタル』は関わるスタッフも多いですし。

澤田
そうだね。初期のコロナ禍における撮影時に、スタジオに入る、技術さん、美術さんを含めた全スタッフ、全キャスト関係者の合計250人余りのPCR検査を手配しなければならないとなった時には、本当に倒れるかと思った(笑)。当時はまだ検査キットなどというものは世の中に出回っていなくて、出演者を含め、全員クリニックに行って検査を受けてもらわなければいけなかったんだよ。「こんな大人数を限られた期間に受け入れてくれる所なんかあるのか…?」と思った。

深野
大変すぎる(笑)。

澤田