皆が目にするあの映像、
誰がどうやって
実現しているんですか?
『ドキュメンタル』
の、技術の話。
伴野:『ドキュメンタル』は、回を重ねるごとに技術的な規模も大きくなって、40数台のカメラを使用していますが、マイクは何本仕込んでいるんですか?
高橋:演者につけるピンマイクが10〜14本、ピンマイクがなくても声を録れるよう室内におよそ20本です。どこに誰がいても録り漏らさないよう、エリア全体をカバーできるように置いてあります。
小野寺:ちょっとした顔の向きでマイクの方向も変わってきちゃうので、仕込むのも大変ですよね。
高橋:『ドキュメンタル』は、閉鎖されたセットの中で、とにかく相手が笑うまで笑わせ続けるという特殊な企画です。スタッフが入れない状況下で収録しければならないのがやはりエネルギーのいるところです。
河田:マイクも数が多いし、場所によって種類も変えるので、ほかの現場と比べてやはり管理が難しいと感じます。カメラも配置が難しいんじゃないですか?
小野寺:出演者の方々が集まりやすい場所を想定しておくことが重要ですね。「たぶん、遊ぶならこのスペースだよね」と予測して、エリアごとに死角になっている場所を見つけなければなりません。
高橋:普段スタジオで使っているような大きなカメラではなくて、仕込むためのいわゆる“リモコンカメラ”を使うようになったじゃないですか。あれも初回から比べると配置が変わってきているんじゃないですか?
伴野:実は配置の大枠はあまり変わっていないんです。どちらかと言えば、付けるポジションが増えている感じです。
小野寺:本番も大変だけど、セッティングが一番大変ですよね。カメラを取り付けて、そこにケーブルを全部引き込まなければならないので。
佐々木:カメラ調整、システム管理をするVE(ビデオエンジニア)さんも大変ですよ。
小野寺:40台のカメラが全部個別に回っているので、その収録の管理や調整となると、苦労は尽きませんよね。
高橋:さらに、カメラには黒い布を被せて、スタッフも黒マスクや黒手袋をして目立たないようにしていますよね。
伴野:出演者さんが「撮られている」という意識になるとライブ感が薄れてしまうので、カメラを見せないような工夫をしながら現場を作っています。
『ドキュメンタル』
だから得られる
醍醐味。
佐々木:『ドキュメンタル』の現場に携わっていて、皆さんがやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
伴野:やっぱり出演者さんの“にやっ”が撮れた時は面白いですよね。「この人笑いそうだな…」という予測のもと、その方を先行して撮っておくようにするので、ハマった時は「やった!」と思います。
小野寺:逃しちゃいけない瞬間が絶対あって、出演者さんのネタも含めて、そういう瞬間をちゃんと撮れた時はやりがいを感じますよね。
高橋:あと意外に大変なのが、ネタが超面白い時ですね。
小野寺:ありますね(笑)。こっちも声を殺さないといけない。
佐々木:あの狭い空間の中でやっているので、出演者以外の笑い声が聞こえちゃうと、その場の空気が崩れちゃいますからね。カメラマンはじっと笑いに耐えなければいけない。音声のお二人は、どんな時にやりがいを感じますか?
河田:基本的には事前の準備をしっかりやって、本番中は見守るという形になるんですが、私は各出演者さんの楽屋へピンマイクを付けに行くので、それぞれの緊張感や焦燥感を感じる事が出来、一緒に番組を作っている感覚になるのは嬉しいです。
小野寺:本番前の様子も、人によって違うんですね。
河田:そうですね。緊張からすごく話しかけて来られる方もいれば、静かに緊張感を高めている方、逆にリラックスしているように見える方もいます。本当に人それぞれ違うんですよね。
高橋:やっぱり40台のカメラと30本以上のマイクという規模のシステムを組んで、無事に収録して作品になっているということが、何よりの喜びですね。
小野寺:注目度も高い作品ですしね。僕、エンドロールに名前が載った時、友達に「すげー!」って言われました(笑)。
伴野:他社の方からも言われますよね。「あれどうやってんの?」って。
高橋:確かに、他の番組をやっていてもあまり言われませんが、『ドキュメンタル』に関しては各所から聞かれますね。
佐々木:技術的な興味からスタジオへ覗きに来るスタッフもいますよ。「どこにカメラ仕込んであるかわからないなー」「こんなところにも」って感心されます。
小野寺:それは嬉しいですね。
技術職に向いている人って、
どんな人なの?
佐々木:これからの共同テレビの技術職に、どんな方が加わってほしいと思います?
河田:大変なことは常にあるんですけど、その中にちゃんと楽しさを見つけられる人がいいかなと思います。私自身、大変な現場でもやり終わった後は「楽しかった」と思える派なので。終わった後に「やって良かったな」と思えるような現場にしたい、そうするためにどうすればいいかを考えるようできると、結果にも繋がりやすいのではと思います。
高橋:生放送に代表されるようなプレッシャーのある時間を皆で一生懸命やり切って、「大変だったけど、やって良かった」という喜びを一緒に味わえることが醍醐味の一つですよね。
佐々木:時節柄今は難しいけれど、収録が終わってから“反省会”と称してお酒を飲んだりっていう時間を共有しながら交流を図るのが楽しかったですよね。
伴野:皆で生放送後にそのVTRを見ながらわいわいやるのが楽しいんですよね。
小野寺:あとは、ミーハーな気持ちを持っている人にも来てほしいですね。僕自身がミーハーなので、大変な仕事でも「芸能人に会えて嬉しい」とか「スポーツをすごく近くで見れて嬉しい」とかで全然割り切れるんで。
高橋:そういうのって意外と大事ですよね。
伴野:あとコミュニケーション力も欠かせません。毎日同じメンバーで仕事する訳じゃなく、明日の現場で隣にいるカメラマンは違うことも当たり前。だからコミュニケーションを通じて連携することがすごく大切です。
高橋:僕らの仕事って、一人でやる仕事がほぼないですもんね。どんな現場でも、チームで作って、チームで放送や配信をしている。だからコミュニケーションを通じて人をまとめられる力があれば、すごく活躍できる気がします。
佐々木:そのベースが備わっていればどんな人でもここで強みを活かしていけると思います。機材がとことん好きでも、ミーハーでも、新しい物好きでもいい。そして個々の強みを活かしながら働けるところがこの業界の良さだとも言えますね。